グリーン・ヒーリング

ヘルシー探偵団

グリーン・ヒーリング

緑のカーテンや大型観葉植物など、いま、身近な“グリーン”に、
日常の癒しを求める人が増えている。

 

グリーン・ヒーリング

ここ数年、酷暑が続く日本の夏。そんな中、生活に“緑”を取り込むことで、涼しさと癒しを求める“グリーン・ヒーリング”という考えが広まってきている。そのムーブメントの中心にあるのは、“緑のカーテン”だ。ネットを張り、つる性の植物を日よけにする緑のカーテン。横浜市環境科学研究所の試算によると、南側の窓面8m2に緑のカーテンを設けると、ひと夏(7月から9月)で家庭用エアコン(8畳タイプ)1台分に相当する省エネ効果があるという。

「2011年の東日本大震災が大きかったと思います。電力への関心、エネルギーへの意識が向上して、自分たちなりの省エネをしようという流れの中で、緑のカーテンが注目されるようになりました」
と語るのは、サカタのタネ広報宣伝部・大無田龍一さん。サカタのタネ「緑のカーテン」推進チームの一員でもあり、同チームで「花も実もある よくばり!緑のカーテン」という本も昨年出版されている。

「当社のアンケート調査によりますと、購入者の方がはじめる前に期待されることは、室温の低下です。“緑のカーテンによって省エネしたい”ということ。もちろん、実際に室温は低下します。しかし、その方々の1年後の感想は違っていまして、“緑を見ることで癒された”という意見がいちばん多い。次に“育てた作物を食べられて嬉しかった”という声。室温低下という物理的な効果より心の癒し、食べることの喜びという副次的な効果のほうが大きかったんです。この結果は、大きな発見でした」

省エネ目的で始めてみたら、心の癒し=グリーン・ヒーリングという意外な効果も生まれた。緑のカーテンが「成功した」という人はアンケートでも60%を占める。その数字の裏側には“癒し”という副産物までが得られたという意味合いも含まれているのだろう。しかし、緑のカーテンの肯定的な効果はそれだけではなかった。
「緑のカーテンによってコミュニケーションも生まれています。おじいちゃん・おばあちゃんからの感想で“孫が植物の成長をすごく楽しみにしてくれている”という話がありました。家の中でいちばん日が当たる窓に緑のカーテンを設置することが基本なので、結果として家族のみなさんが集まるリビングの窓からグリーンが見えるというケースが多い。そして、その成長について家族で会話することも多くなる、というでしょう。同じように、近隣の方々とのコミュニケーションも増すようです。ゴーヤーをやっていただくとわかるのですが、獲れすぎてしまったりします。毎日、ゴーヤーチャンプルーを食べるわけにもいかないですから(笑)、ご近所に分けたりすることで、改めてご近所との関係性が深まったという話も伺います。いま、求められる地域の活性化にも結びついているんです」

人と人のつながりや絆が求められている一方で、隣近所とのコミュニケーションは希薄だということも多い現代社会。緑のカーテンは、それを解消するひとつのきっかけとなるのだ。外に緑のカーテンが出ていると、見知らぬ人に声を掛けられることも増えるという。コミュニケーションもまた、ひとつの癒し。
「“園芸”というと高齢者の方が多い。しかし、緑のカーテンは30代・40代の方が多くやられています。圧倒的に若いんですね。そういったデータからも、若い層の方々が、日常生活の中で新しい形のコミュニケーションを求め、実践されているということが分かると思います」

規模も大きく始めるのが難しいと感じる緑のカーテンだが、実際にはそんなに難しいものではない。癒しの効果はやる気さえあれば、意外と簡単に得られるようだ。
「まず、はじめてほしいですね。思っているよりは簡単ですから。植物は自分の力で育っていくんです。失敗するとしたら、毎日の水やりを怠ることだけでしょうか。癖をつけるといいと思います。私も個人的に緑のカーテンをやっていますが、水やりは朝の歯磨きをしながらと決めています。そうすると忘れない。さらに、その日の気候や雨について考えたり、風を感じたりすることが多くなりました。それは、都会の中で自然と一体化する経験であり、とても大切なことだといまは感じています。初心者の方にお勧めなのは、きゅうり、ゴーヤー、ヘチマ。上級者向けなのが、メロンやスイカです。メロンやスイカがなぜ難しいかと言いますと、枝を切ったり、都会だと受粉を媒介する虫が少ないのでそれを自分でやったりしなければいけません。初心者の方々に特にお勧めなのは、きゅうりですね。品種も選べますし、1株から30本くらいは取れます。自分で育てて、自分で食べる。まさに“究極の地産地消”です。大きさによって味も違いますから、味比べをしても楽しいと思います。自分が作ったというスパイスが入っていますからより美味しく感じられるようです。ゴーヤーやきゅうりのように、実がなるものは見ていて楽しいんですよね。毎日、実が大きくなっていくのがわかりますから」

癒しを得るだけでなく、毎日の変化が楽しくなり、生活が生き生きしてくる。緑のカーテンがあることでメンタルが前向きに変わっていくのだ。今後について、大無田さんは「毎年やるリピーターも増えていますし、欲が出てきて、これからは、綺麗にカッコよくやりたいというインテリア・エクステリアの一部のような考え方も増えていくでしょう」と語る。
緑のカーテンについては行政による取り組みも進んでいる。ヒートアイランド現象に対する対抗策として屋上緑化が注目されたが、いま、緑のカーテンという壁面緑化も広められている。環境省は「グリーンカーテン・プロジェクト」を立ち上げ、各地でイベントなども開催している。

そして、緑のカーテンと共に、いま人気を得ているのが大型の観葉植物。大きな観葉植物専門店「ガーデントロピカ」運営会社・友行園芸場の武井美和さんは言う。
「ここのところ人気があがっています。特にタワーマンションなどに住まわれる方からの注文が多いですね。低価格のものより高価格のもののほうがよく出ます。4万円から5万円の価格帯で、大きくて樹形が美しく見ているだけで心が潤うようなものが売れています。売れ筋としては、オーガスタ、アルティシマゴム、ベンガルボダイジュなど。育てやすいのが特徴ですね。ユーザーの声を聞くと、癒されるという声が大きい。元気がないと心配したり、大きくなると嬉しかったり、まさに室内で飼うペットと同じ感覚なんだと思います」
関西に本拠を置くガーデントロピカだが、通販をはじめたところ東京への販売がもっとも大きくなったという。タワーマンションが増え、そこに住む余裕のある層が、緑と癒しを求めて大型の観葉植物を買うという流れが生まれているようだ。高層住宅は風が強くベランダやバルコニーに植物を置きづらいので、室内のものが好まれるという理由もある。つまり、高層住宅に足りない緑を、大きな観葉植物が補っているのだ。

さらに、近年始める人が増えているのが、手軽で新しい形の「家庭菜園」。その人気商品についてイイハナ・ドットコムの杉本伸二さんは次のように語る。
「園芸というとかつては男性のものでしたが、最近は女性のユーザーが多くなっています。中でも、初心者に向けたオールインワンでできる商品が人気を集めています。ミニトマト、ハーブなどが根強い人気。トマトなどは、だんだんと赤くなっていく変化が楽しいようですね。最近人気なのが、部屋の中で菜園を育てられるLEDプランターです。1時間近くずっと眺めているという方もいらっしゃいます。アクアリウムやテラリウムを見るような感覚なのではないでしょうか」

このように、緑による癒しはさらに進化をしているようだ。さまざまな形のグリーン・ヒーリング。それは現代人のライフスタイルを変え、忙しい日常に安らぎと爽やかな空気を運んでいる。

大きな観葉植物専門店 ガーデントロピカ

http://garden-tropica.com/

イイハナ・ドットコム

http://www.e87.com/

環境省 グリーンカーテン・プロジェクト

http://funtoshare.env.go.jp/green/

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2014.07.22 UP