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「地産地消」探訪記

“一子相伝”で伝承される稀少な伝統野菜。
若手生産者が加わり、新たな一歩を踏み出す。

青森県津軽地方の南端に位置し、南側は秋田県に隣接する大鰐町。豊かな自然に恵まれたこの地はスキーと温泉とリンゴの町として知られ、古くは津軽藩主も眼病治療のために訪れた湯治場としても長く親しまれてきた。そんな大鰐町の温泉を活用して栽培する冬の伝統野菜であり、地域団体商標にも認定されている地産地消のブランド食材が「大鰐温泉もやし」だ。今回、青森県南津軽郡大鰐町の生産者・八木橋祐也さんと八木橋順さんの元を訪れた。

「大鰐温泉もやし」の歴史は古く、文献によれば350年以上前から栽培されており、津軽藩三代目藩主・津軽信義が湯治に訪れた際には必ず献上されたとも言われている。大正時代には29軒あった生産者も、昭和には17軒、現在は7軒にまで減少。生育方法はそれぞれの生産者が代々受け継ぎ、一切口外されることがなかったという。このため高齢化に伴い廃業を余儀なくされ、危機感を持った町が伝承のもやし栽培を絶やさぬよう後継者確保に乗り出し、農業後継者育成事業の公募により八木橋祐也さんと八木橋順さんが新たに加わった。古くからの生産者の下で2年間修業した後、独立。ふたり力を合わせ、町営のもやし栽培施設で取り組んでいる。

栽培過程で温泉をふんだんに活用。
長くシャキシャキとした歯触りが特徴。

「大鰐温泉もやし」は文字通り栽培に大鰐温泉を利用して育てるもやしで、「豆もやし」と「そばもやし」の2種類がある。使用する豆は先人が選び伝えてきたという、地域在来の小粒種「小八豆」。「この種になる豆も自分たちで育てています。失敗したらそれで終わり。気が抜けません」と、八木橋祐也さんは言う。

種まきの前に豆を温泉に浸し、発芽を促してから種をまき、1週間で収穫の時を迎える。土の下に張り巡らせたパイプに温泉を循環させて地温を高め、生育の途中にも温泉水を与えているのも独特だ。ひとシーズン使った土は生育に必要な栄養分がすべて吸い取られているため、土を入れ替えるのだが、この作業も重労働。天日干しをして、雨風にさらし、雑草をわざと混ぜながら温泉をかけて栄養分を補給し、温泉熱で温度管理も欠かさずに、また一年後に使用できるよう土づくりにも励む。

収穫したもやしの洗浄、仕上げにも温泉を使用する。「土と温泉の力だけで育ち、種豆の状態によって発芽のスピードも違う。成長が悪いとバラついて仕分けや束ねる作業も手間がかかります」とは、八木橋順さん。無化学肥料、無農薬、各生産者が独自にブレンドした土で栽培するため、ほのかな土の香りと独特の旨みを持ち併わせる。昔ながらのワラで束ねてあるのが目印で、一般的なもやしよりも長く、シャキシャキとした歯触りが特徴だ。夏場は地温が高いため休耕しているが、年間を通して栽培できるようチャレンジしているという。試行錯誤を繰り返しながら伝承野菜の栽培に懸命に取り組む意欲的な生産者を、町が一丸となって支えている。

旅の8 青森県 大鰐温泉もやし

青森県の地産地消事情

県が消費者、流通業者、生産者との橋渡しを担い、
様々な活動を通じて地場産物の利用割合を高める。

青森県が設ける「総合販売戦略課」では、青森県の農産物・海産物などの一次産品、 加工品などの二次産品など、魅力的な「あおもり産品」を広める活動を行っている。量販店や産地直売所で県内産の農産物、海産物を購入してもらう青森県産品「愛用応援キャンペーン」をはじめ、観光地や旅館等で地産地消を推進する検討会、また学校給食における地場産物の利用割合を高めるべく水産加工品の開発など、消費者、流通業者、生産者・製造者との橋渡しを担い、活動を行っている。また、青森県産のブランド食材として「ふかうら雪にんじん」「大鰐温泉もやし」に続き、下北半島北部の風間浦村の「風間浦鮟鱇」、「十和田村のヒメマス」なども、地域団体商標への登録を出願している。(写真は名産のひとつ、にんにく)

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