生活習慣病の基礎知識

“健康寿命”を知っていますか?

“健康寿命”を知っていますか?
平均寿命と健康寿命には、
9〜13年の開きがあります。

健康寿命は、
健康上の問題で
日常生活が制限されずに
生活できる期間のことです。

 「健康寿命」は、2000年にWHO(世界保健機関)が示した考えで、自立した生活ができる期間のことをいいます。つまり、実際の寿命から生活に介護が必要になった状態の期間を差し引いた期間が健康寿命です。
 日本では、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針である「健康日本21(第二次)」に、2013年から健康寿命という言葉が掲げられ、健康寿命を延ばすことと、地域や社会経済状況の違いによる健康寿命の格差を縮小することが目標とされました。

「健康寿命」=
「実際の寿命」−「要介護の期間」
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平均寿命と健康寿命には男性9.1年、女性12.7年の開きがあります。

 平均寿命と健康寿命の差が小さければ小さいほど、自立した生活を営める期間が長くなります。しかし、2010年の統計で見ると、男性の場合の平均寿命は79.55歳、健康寿命は70.42歳で、その差は9.13年。女性の場合、平均寿命は86.30歳、健康寿命は73.62歳で、その差はさらに広がり12.68年にも及びました。10年前後、生活の質(QOL)が低下した中で過ごしているということです。

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平均寿命と健康寿命の差

介護が必要になる大きな原因は、「生活習慣病」や
「運動機能の低下」です。

 介護や支援が必要になる原因は何でしょうか。主な原因を示したのが下のグラフです。
 このグラフからもわかる通り、要介護の主な原因は、大きく「生活習慣病」と「運動機能の低下」が関与しているといえるでしょう。1位の脳血管疾患(脳卒中)、6位の心疾患(心臓病)は、いずれも高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が大きな要因です。

 これらの生活習慣病を放置すれば、血管の内側が狭くなったり詰まったりする「動脈硬化」が進行し、その結果脳血管疾患(脳卒中)や心疾患(心臓病)などの病気を引き起こす危険性が高まるからです。脳血管疾患(脳卒中)や心疾患(心臓病)は、健康寿命を短くする原因となるばかりでなく、大きな死亡原因でもあります。日本人の死因の約3割を占めています。
 また、骨折・転倒、関節疾患は運動機能の障害で、移動能力が低下することで要介護になる危険が高まるのです。

介護が必要(要介護)になった主な原因 日本人の主な死因 要支援になった主な原因
日本人の主な死因 03

健康寿命を延ばすには、
生活習慣を見直すことが大切です。
ポイントは、
毎日の「食事」と「運動」です。

健康寿命を縮める最大のリスクは生活習慣病です。

 健康寿命を縮める原因は様々ですが、その最大のリスクが「高血圧」や「糖尿病」、「脂質異常症」などの生活習慣病です。生活習慣病が怖いのは、あまり自覚症状がないままに、突然脳血管疾患(脳卒中)や心疾患(心臓病)などを引き起こす危険性があることです。また、生活習慣病をひとつだけ持っているよりも、二つ、三つと増えるほど動脈硬化が進行しやすく、脳卒中の発症など、介護のリスクを高めることにもなります。「自分はまだまだ大丈夫」、「健診では高血圧と言われたけれど、特に不調は感じないし」などと考えていたら大きな間違いです。
 生活習慣病を予防、改善するには、まず今の生活習慣を見直してみましょう。

生活習慣病の数が多いほど動脈硬化が進行しやすい

生活習慣の改善は「食生活」と「運動」が基本です。

 生活習慣の中でも見直しが必要なのが、「食事」と「運動」です。  現代人の生活では、食べ過ぎ、飲み過ぎ、偏食、不規則な食事時間や外食の多用など、間違った食生活をおくる人が多いものです。
 食事における大切なポイントは、「食事の量」と「食事の質」と「規則正しく三食食べること」です。
 食事量については、まずは腹八分め、病気の方は体格や身体活動レベルに合わせて「自分にとっての適正なエネルギー量」を計算し、それを超えるエネルギー量を摂らないよう心がけましょう。

 また、同じメニューばかりを続けたり、好きな食材を多用するといった偏食は、偏った栄養成分の摂り過ぎになるばかりでなく、体が必要とするビタミンやミネラルなどの不足にもつながります。肉や魚、野菜、穀類、果物など、様々な食材をバランス良く食べ、1日の塩分量も適正な範囲におさめることが重要です。
 さらに、寝る前の食事などは肥満にもつながります。できるだけ同じタイミングで三食食事をとるようにしたいものです。
 とはいえ、長年続けてきた生活習慣は、一朝一夕には変えるのが難しいもの。一度にすべてを変えられなくてもできるところから少しずつ変えていきましょう。

食生活の見直しポイント 05

「運動」は消費エネルギーを増し筋力や骨の衰えを低減します。

 「食事」とともに大切な生活習慣が、適切な「運動」です。
 車社会の現代では、ついつい運動不足になりがちです。けれども、「運動」は、健康寿命を延ばす上で重要です。日頃から体を動かす習慣をつけておけば、消費エネルギーが増して血糖や脂質などがより使われやすくなり、内臓脂肪を減らし、生活習慣病の予防や改善につながります。
 また、運動には筋力の衰えを防ぐ効果もあります。私たちの筋肉量は、40歳を過ぎると徐々に減少し、65歳以降にはさらに減少、80歳までには40歳のときより30〜40%の筋肉量が低下するといわれています。そうした筋肉量の低下を少しでも抑えるには運動の継続が必要なのです。さらに、適度な運動には骨を丈夫にする作用もあります。
 最近では、変形性関節症や骨粗しょう症など、筋肉や骨、関節などの運動器の障害により、要介護状態になったり、要介護になる危険性の高い状態を日本整形外科学会等では「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と呼んでいます。前述したように、要介護の原因の多くが、まさにこのロコモですから、その予防のためにも運動習慣が重要なのです。

 さらに最近では、運動は認知症の予防にも効果があるという報告も出ています。西ドイツで行われた55歳以上の約4000人を対象にした研究で、1日30分の中程度以上の運動を週に1回すれば、認知機能低下の発症頻度が半減したというものです。認知症予防のためにも、この程度の運動は続けたいものです。
 例えば、通勤で一駅分を歩く、エスカレーターでなく階段を使う、近所をゆっくりと散歩するなど、自分の体の状況や、ライフスタイルに合った運動習慣を身につけることが大切です。体に痛みがあると、寝たまま、座ったままになりがちですが、それが筋力の低下を招き、さらに運動機能が低下するという悪循環に陥る可能性もあります。座ったままや、ベッドに寝たままでもできる運動もありますし、部屋の中で安全に運動する方法もあります。かかりつけの医師に相談の上、自分に合ったエクササイズの方法を教えてもらい、できる範囲で運動するようにしましょう。

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お話:
千葉大学大学院医学研究院
細胞治療内科学講座 教授
横手 幸太郎先生

学歴/職歴

    • 1988年3月
    • 千葉大学医学部医学科卒業
    • 1996年2月
    • スウェーデン国立ウプサラ大学大学院博士課程修了(PhD)
    • 1998年3月
    • 千葉大学大学院博士課程修了(医学博士)
    • 同年4月
    • 日本学術振興会特別研究員
    • 2009年5月
    • 千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学講座(旧第二内科)教授
    • 千葉大学医学部附属病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 科長
    • 2011年4月
    • 千葉大学医学部附属病院 副病院長 兼任
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