生活習慣病の基礎知識

脂質異常症の基礎知識

脂質異常症は血液中の脂質の増加によって、
血がドロドロになった状態です。
日常の食事管理を徹底し、
まずは内臓脂肪型肥満を解消しましょう。
定期健康診断によるLDL・HDLコレステロール値、
中性脂肪値の管理も大切です。

いま、日本では成人の約2.5人にひとり※1が、
「脂質異常症※2が疑われる人」といわれています。

※1「平成18年 厚生労働省 国民健康・栄養調査」によると、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールを用いた判定では、20歳以上で「脂質異常症が疑われる人」は約4,220万人(推計値)となります。これは、わが国の成人人口(平成18年約1億400万人概算値)の約2.5人にひとりに当たります。

※2日本動脈硬化学会では平成19(2007)年に「高脂血症の診断基準」を「脂質異常症の診断基準」とし、重要な脂質異常である低HDLコレステロール血症を含む表現として「高脂血症」という名称が適さないため、呼称を「脂質異常症」と変更しました。

脂質異常症とは血液中の特定の脂質値が基準値より
高い、低いなどの異常値である状態です。

血液中には、コレステロール、リン脂質、中性脂肪(トリグリセライド)、遊離脂肪酸などの脂質があります。脂質異常症は、どの脂質が多いか、少ないかによってタイプが分かれます。ほとんどの場合、自覚症状がありません。それでいて、心筋梗塞・脳卒中などの危険な病気を招く可能性が高いことが特徴です。

コレステロール/中性脂肪

コレステロールには善玉と悪玉があります。

コレステロールは、血液中では蛋白質にくるまれ「リポ蛋白」という粒子になっています。リポ蛋白には、からだの各部にコレステロールを供給する働きをもつLDLと、からだの各部からコレステロールを回収する働きをもつHDLがあります。
供給するものが多いほど動脈硬化は進行しやすく、回収するものが多いほど動脈硬化の進行は抑えられることがわかっています。
供給するタイプのLDLに含まれるコレステロールは悪玉コレステロール(LDLコレステロール)、回収するタイプのHDLに含まれるコレステロールは善玉コレステロール(HDLコレステロール)と呼ばれています。

リポ蛋白によるコレステロールの輸送

脂質異常症を予防するには、
中性脂肪値にも気をつけながら、生活習慣の影響に注目しましょう。

遺伝や加齢によって、血液中のコレステロール値や中性脂肪値が高くなることがあります。しかし、ほとんどの人は脂質や糖質・アルコールの摂り過ぎなど偏った食習慣や運動不足などによって、血液中のコレステロール値や中性脂肪値が高くなってしまうようです。脂質異常症を防ぐには、まず、日頃の生活習慣の見直しが大切です。

飾り 飾り

更年期以降の女性の方は、脂質異常症に要注意。

更年期を迎えた女性は、エストロゲンといわれる女性ホルモンが閉経後に減少し、コレステロール値や中性脂肪値が高くなる傾向があります。短期間のうちに動脈硬化の危険性がぐんと上がりますので、注意が必要です。

悪い生活習慣

脂質異常症の本当の恐ろしさは、心臓病や脳卒中の発症です。

脂質異常症は動脈硬化を招く、
大きな原因です。

全身の細胞に酸素や栄養素を運ぶ、血液の通り道である血管。健康な方の血管は、本来、弾力があって血液がサラサラと流れています。しかし血液中のLDLコレステロールが増え過ぎると、血液の通り道が狭くなる動脈硬化が進行します。これを放置していると、血管がますます狭くなり、気づかないうちに症状を悪化させてしまう恐れがあります。

自覚症状のない、脂質異常症。
放っておくと、心臓病や脳卒中を引き起こします。

脂質異常症は、自覚症状がない疾患です。血管内にできたコブ(アテローム)によって血管が狭められると、血液の循環が妨げられるようになります。例えば、心臓へつながる血管が詰まってしまうと、狭心症や心筋梗塞などを含めた心臓病に。脳の血管であれば、脳出血や脳梗塞などの脳卒中を引き起こします。

脂質異常症が、動脈硬化を進行させるメカニズム

気づきにくい病気である脂質異常症は、
予防できる病気でもあります。

早期発見・早期治療のために、定期診断を受けましょう。

質異常症は、血中「LDLコレステロール」、「HDLコレステロール」、「トリグリセライド(中性脂肪)」を測定することにより診断します。日本動脈硬化学会では、「LDLコレステロール(LDL-C)値」、「トリグリセライド(TG)値」が高いほど、また余分なコレステロールを回収する働きのある「HDLコレステロール(HDL-C)値」が

低いほど、動脈硬化性疾患の発症頻度が高い「脂質異常症」としています。自覚症状のない脂質異常症をいち早く発見・治療するためにも、定期診断を受ける習慣をつけましょう。

脂質異常症:スクリーニングのための診断基準(空腹時採血※1)

TGが400mg/dL以上や食後採血の場合にはnon HDL-C(TC-HDL-C)を使用し、その基準はLDL-C+30mg/dLとします。
※10-12時間以上の絶食を「空腹時」とします。ただし、水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とします。
※※スクリーニングで境界域高LDLコレステロール血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮します。

脂質異常症解説・監修 国立循環器病研究センター 臨床研究部・心臓血管内科 北風政史

LDLコレステロールを酸化させないために、食生活を考えましょう。

動脈硬化は、LDLコレステロールそのものではなく、酸化などで変性を受けた変性LDLコレステロールの増加で促進します。このことから、LDLコレステロールを酸化変性させない栄養素を含んだ食品を積極的に摂ることが、動脈硬化の予防になるといわれています。効果的な栄養素とは、β-カロテン、ビタミンE、ビタミンC。これ以外の抗酸化物質には、赤ワインやお茶などに含まれているポリフェノール、お茶に含まれているカテキン、ゴマに含まれているゴマリグナンなどがあります。

ビタミンEを多く含む食品 ビタミンCを多く含む食品 β-カロテンを多く含む食品

脂質異常症は、脂の摂り過ぎだけが原因ではありません。
エネルギーと栄養バランスを考えましょう。

適正なエネルギー量を守り、
栄養のバランスを守って食べましょう。

まず、1日の食事から摂るエネルギー量を守りましょう。適正なエネルギーは、簡単な計算で知ることができます。もしあなたが、身長170cmであまり体を動かさない仕事の場合、約1600〜1900kcal。

中高年の方の多くは、身体活動レベルの「低い」にあたります。次に、バランス。量を守るだけではなく、エネルギー、脂肪、コレステロールなどに気をつけながら、いろいろな食品からとりあわせて食べましょう。

適正なエネルギーの計算

脂肪の量と質にも注意を。

動物性脂肪には血中のコレステロールを増やす飽和脂肪酸が多く含まれ、植物性脂肪には血中のコレステロールを減らす不飽和脂肪酸※が多く含まれています。飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸を摂取する割合は、3:4:3が良いといわれています。

脂肪の種類と特徴

脂肪の種類 主な動き 多く含まれている食品
飽和脂肪酸 コレステロールを増やす 肉類、卵、バター、チーズなど
一価不飽和脂肪酸 コレステロールを減らす オリーブ油、なたね油、ごま油など
多価不飽和脂肪酸 コレステロールを減らす 大豆油、コーン油、ごま油、魚介類など

血管を丈夫にする大切なたんぱく質を、かしこく食べるには…

100kcalに相当する、サーロインとヒレ肉の比較です。あなたならどちらを選びますか?右図のように同じエネルギー量で比べれば、脂肪を多く含む肉はたんぱく質の量が少なくなります。肉を食べていても脂肪たっぷりの肉ばかりだと、たんぱく質が足りているとは一概にいえません。

脂肪の種類と特徴

不足しがちな食物繊維は、心がけて摂りたい栄養成分!

腸の働きを良くすることで知られている食物繊維は、コレステロールの吸収を抑えて排泄を促したり、食後の急激な血糖値の上昇を防いだり、高血圧の原因となるナトリウムの排泄を促したりと、とても働きものです。主に穀類、野菜、海藻、芋類、豆類、きのこ類などに多く含まれており、食品全体から見ると植物性食品に多く含まれます。
また、果物に含まれる果糖は、体脂肪に合成されやすいので食べ過ぎには注意。果物を摂る場合、中性脂肪値の高い方は1日80〜100kcal以内にしましょう。

果物の量とカロリー

脂質異常症対策のため、
1日にどのくらい食べてもいいのでしょうか?

 

食品群

1200kcal

1400kcal

1600kcal

1800kcal

摂取量

エネルギー

摂取量

エネルギー

摂取量

エネルギー

摂取量

エネルギー

炭水化物を
多く含む食品

ご飯、その他穀類

330g

510kcal

400g

656kcal

480g

758kcal

550g

904kcal

芋類

40g

28kcal

40g

28kcal

50g

35kcal

60g

42kcal

果実類

100〜150g

44kcal

100〜150g

44kcal

100〜150g

54kcal

150g

82kcal

たんぱく質を
多く含む食品

肉類

40g

91kcal

40g

91kcal

50g

114kcal

50g

114kcal

魚介類

60g

91kcal

60g

91kcal

70g

106kcal

70g

106kcal

大豆、大豆製品、
その他の豆類

40g

54kcal

40g

54kcal

50g

68kcal

60g

82kcal

卵類

50g

81kcal

50g

81kcal

50g

81kcal

50g

81kcal

牛乳類

180g

129kcal

200g

143kcal

200g

143kcal

200g

143kcal

ビタミン・
ミネラル・
食物繊維を
多く含む食品

緑黄色野菜

120g

34kcal

120g

34kcal

120g

34kcal

120g

34kcal

その他の野菜

230g

58kcal

230g

58kcal

230g

58kcal

230g

58kcal

きのこ類

10g

0kcal

10g

0kcal

10g

0kcal

10g

0kcal

海藻類

10g

0kcal

10g

0kcal

10g

0kcal

10g

0kcal

脂質を
多く含む食品

油脂類

6g

48kcal

10g

80kcal

12g

96kcal

12g

96kcal

種実類

2g

11kcal

2g

11kcal

2g

11kcal

3g

16kcal

その他
調味料

砂糖類

6g

22kcal

6g

22kcal

6g

22kcal

6g

22kcal

調味料・その他

0g

0kcal

0g

0kcal

10g

7kcal

15g

10kcal

合計エネルギー

1201kcal

1393kcal

1587kcal

1790kcal

1日に食べられる食品の分量を把握しましょう。

上の表は、各食品の「1日に食べてもいい量」を一覧にしたものです。前項で算出した適正なエネルギーにあわせてご覧ください。表中にあるグラム数が、食品ごとの1日に摂取したい重量なので朝・昼・夕の3食に振り分けて食べれば、自然と栄養バランスのよい食事メニューになります。

また、適正なエネルギーが変わっても太字の重量しか変化しません。ご家族での食事等、それぞれ異なったエネルギー量の食事をつくる場合には、太字の重量を加減してください。皆さんと同じ献立を楽しむことができます。

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