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1人分 77kcal 食塩相当量 1.3g
ゼラチンと寒天を併用し、
複雑な食感に仕上げる。
滋養効果の高い長芋を
目にも涼やかな夏の一品に。
5月のはじめごろから、みるみる日が長くなるのを感じはじめ、あっという間に夏至がやってきます。この時期におすすめしたいのが桃源豆冨。長芋のすりながしを冷やし固めた料理で、見た目とつるんとした食感が涼を呼びます。さっぱりと食べられて、かつ滋養豊かなヘルシーフード。私の店でも、今の時期の定番料理としてお出ししています。長芋寒天は、家庭でも作られるという方が多くおられると思いますが、私のレシピのポイントは、フルーツを加えて香り良く、そしてゼラチンも併用して食感も豊かに仕上げること。少々手間がかかりますが、うまくできればワンランク上のおいしさに仕上がります。
長芋はすべてすりおろさずに、刻んだものを合わせて食感を出します。少量加えるやまと芋は粘り担当。果物は、夏らしく桃とすももを使います。ともに香りがよく、桃の豊かな甘み、すもものナチュラルな甘酸っぱさが、長芋寒天独特の芋臭さを消してくれます。すももの果皮に近い部分の果肉は別に取っておいて、赤色のアクセントとして使います。
寒天とゼラチンは特性が異なります。寒天は口の中でほぐれ、ゼラチンは弾力がある。両方を合わせることで、より複雑な食感になります。液体と合わせる際も、寒天はしっかり沸かすことで固まりやすくなりますが、ゼラチンは溶ければオッケーですので、沸かす必要はありません。まずは寒天を加えて沸かし、粘度が出てきたら粗熱を取ってから、ゼラチンを加えて溶かす。それから山芋、やまと芋を加え混ぜます。
寒天とゼラチンどちらも用意するのが難しい場合は、ゼラチンだけで作ってもかまいません。また、ラップで茶巾包みにするとより簡単です。でもやはり、型で固めて切り出したシャープなフォルムのほうが見た目にも涼を呼びますよね。栄養たっぷりの山芋を涼やかに食して、暑さを乗り切って下さい。
長芋は150gをすりおろし、残り120gを包丁で粗く刻んでおく。やまと芋はすりおろしておく。
芋だしをつくる。みりんを入れた鍋を火にかけてアルコール分を飛ばし、白だし、薄口しょう油を加えてひと煮立ちさせ、粉寒天4gを入れ、沸騰した状態で溶かしていく。
粉寒天を入れたら沸騰させ、しっかり煮詰めたほうが固まりやすい。
(2)にとろみが出てきたら、氷水で粗熱を取り、ゼラチンを溶かす。ゼラチンが溶けたら、(1)と合わせる。
桃、すももは一口大に切り、すももの皮の内側の色が赤い果肉は盛り付け用に取り分け、包丁で叩いておく。
白だし、薄口しょう油、みりん、かつお節を合わせ、かけだしをつくっておく。
(4)をバットに並べて(3)を流し、冷蔵庫で一晩冷やし固める。切り出して器に盛り、かけだしをかけて、叩いたすももの赤い果肉を載せ、おろしたゆず皮で香り付けする。
(3)は鍋底に手を当てて、少し温かいくらいの温度が固まりやすい。
こん棒型の長芋や野山に自生する細長い自然薯、げんこつのような形をしたやまと芋などを山芋(やまのいも)と呼びます。いも類の中で、唯一加熱せず生で食べられるのがこの山芋類。漢方に使われるほど滋養強壮力が高いことで知られています。ビタミンB群やC、カリウムなどのミネラル、食物繊維がバランスよく含まれるヘルシー食材。切ったものを生で食べるとシャキシャキ、加熱するとほくほく、すりおろしはトロトロ、火を入れるとふんわりと、調理方法でさまざまな食感に。今回の桃源豆冨も、「切る」と「すりおろす」を組み合わせることで異なる食感を生む特性を生かした一品です。
1969年、大分県生まれ。京都『たん熊 北店』、福岡『浄水茶寮』(現閉店)勤務を経て、赤坂『BASSIN』料理長就任。2006年、東京・銀座のレストラン型アンテナショップ『坐來大分』の店長兼料理長に就任。大分県内の生産者と連携し、かぼす、椎茸、豊後牛、関あじ、関さばなど優れた食材の普及に尽力し、現在も顧問を務める。2011年農林水産省「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。2014年、『八雲茶寮』料理長に就任。日本の風土が育んだ食材や郷土料理など、古来からの知恵を活かした料理を身上とする。
カード│使用可