
1人分 220kcal 食塩相当量 2.0g
塩漬けイワシの塩分だけで
全体の味付けをする。
魚、豆、野菜、卵が一皿に、
完全食的プレート。
素材を皿に並べてオーブンに入れて焼くだけで完成。今回は旬のイワシを使った手軽でおいしい一皿をご紹介します。材料はイワシ、白インゲンマメ、トマト、卵で、調味料も塩とオリーブ油のみ。手に入りやすい材料だけで作れて、手間要らず。加えて魚、豆、野菜、卵がいちどに摂れる、栄養バランスにすぐれたヘルシーフードです。
一番のポイントは、イワシを一晩、塩漬けにすること。できるだけ新鮮なものを買ってきたら、内臓は取らずに残し、表面をしっかり洗って水けを切って塩を振る。一晩置くことで、即席アンチョビのような旨みが出ます。味付けは、このイワシに振る塩だけ。後からは一切加えません。
イワシ、白インゲンマメ、トマトを耐熱皿に並べてオーブンに入れ、イワシに9割、火が通るまで焼きます。「9割」というのは、残り1割、完成までの間で卵を焼くから。お好みですが、卵は半熟で仕上げると、とろける黄身がソースになります。焼き時間はイワシの大きさやオーブンによってやや異なりますが、レシピの時間を参考に様子を見て下さい。ボウルもフライパンも必要なし、耐熱皿一枚で完成する簡単さ。作ってみたくなりますよね。
実はこのレシピ、今夏スペインを旅した際に、バルセロナの南、カタルーニャ州タラゴナのバルで出会った一皿からヒントを得ました。早速、店でもお出ししたら、お客様にもとても好評で人気の一品になっています。食べ方にもポイントがあります。焼き上がったら、イワシの身をほぐし、全体をぐちゃぐちゃに混ぜて食べる。最初は抵抗があるかもしれませんが、これが現地でも親しまれている食べ方。塩漬けにしたイワシの旨みと内臓のほろ苦さ、白インゲンマメの甘み、トマトの果実味や酸味、卵のコクが一体となって、後を引くおいしさです。内臓はあったほうが絶対においしいですが、苦手な方はもちろん取り除いて構いません。今回は乾燥白インゲンマメを水で戻したものを使っていますが、水煮缶で代用して頂いても可。
素材の組み合わせと塩、わずかなオリーブ油だけで味を決める、スペインらしいシンプルな一皿。イワシが安く、おいしい季節にぜひお試し下さい。
イワシはよく洗って水けを切り、表面にまんべんなく塩を振ってキッチンペーパーとラップで包み、1日置いて塩漬けにしておく。
塩漬けすることによって、アンチョビのような旨みが調味料代わりになる。
白インゲンマメを水で戻して、ゆでる(水煮白インゲンマメを使用しても可)。
(1)と輪切りにしたトマト、水けを切った(2)の白インゲンマメを耐熱皿に並べてオリーブ油を回しかけ、イワシに9割火が入るまで焼く(200℃のオーブンで約10分間が目安)。
耐熱皿の空いているところに卵を割り入れ、再びオーブンに入れて半熟に火が通るまで焼く(約4分間が目安)。
イワシの焼き上がりに合わせて卵を加え、同時に仕上げる。
日本各地の漁港で水揚げされ、安価で栄養価の高いイワシは、古くから大衆魚として親しまれています。近年、気候変動が激しく、また漁獲域も広いことから旬も一概にはいえませんが、マイワシはやはり夏が旬とされています。栄養価の面でも非常にすぐれた食材。特にオメガ3脂肪酸の含有量が豊富です。手に入りやすく、栄養価も高い。生でよし、煮て焼いてよしの万能食材です。スペイン流の食べ方も加えて、楽しんで下さい。
1981年、埼玉県生まれ。2002年、渋谷のスペイン料理店『サン・イシドロ』(現閉店)に入店。スペイン研修を経験しながら8年勤め、内2年はシェフを務める。同店の移転を機に退店。牛込神楽坂のスペインバル『バル・マコ』を1年手伝い、2012年6月、代々木八幡に『アルドアック』を開業。2021年8月より鎌倉への移転に伴い、店名を改めて『アンチョア』としてオープン。伝統料理をベースとしたスペイン各地の料理を上質なワインと併せて提供する。