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1人分 128kcal 食塩相当量 1.7g
大根を一本丸ごと使い切る、
部位の味の違いを活かして。
小鍋の中の雪景色を愛でる
ヘルシーで温かな雪見鍋。
「雪月花」は、古くから日本人に「美しいもの」として愛されてきました。中でも雪は儚さや余白の美を感じさせるもの。今回は冷たい雪を温かな鍋仕立てにした雪見鍋をご紹介します。
主な材料は旬のかき、そして大根。この料理では大根を一本丸ごと使い切る「一物全体」もポイントです。
大根は部位ごとの味わいを活かして調理します。甘くみずみずしい根元は鬼おろしにしてシャクシャクとした食感も楽しめるように、辛みが強い先端は、細かい卸し金で卸して、辛みがそのまま薬味の役割を果たすシャープな味わいに、そして繊維が緻密な真ん中部分にゆっくり火を通して味を引き出し、肉がなくても満足できる旨み、食感をつくります。
大根の真ん中部分は、約30分かけてじっくりソテーします。芯まで火が入り、表面がキャラメリゼされた状態が理想。そこにごぼう、ねぎを同時に仕上がるよう時間差で加えることで、ひとつのフライパンで野菜の火入れが終わります。
一度、ごぼう、ねぎをフライパンから上げて、大根をヘラで一口大につぶす。
ある程度大きい状態で火を入れたほうが、表面と芯部の味わいのグラデーションがつくれ、かつ、火入れ後にヘラで一口大にすることで、包丁で切るより味噌だれの味がよく絡みます。
大根を細かくしたら、フライパンにスペースをつくって、そこで味噌だれをつくります。まずは赤味噌だけ入れて香りを立て、調味料を合わせる。そこにかきをしっかり絡めてから、野菜を加え全体を合わせます。フライパンに味噌を加えてからの作業は、できるだけ手早くやること。大根はフライパンの上で加熱され続けると水が出やすく、かきも長時間火を入れると、せっかくのプリプリ食感が損なわれてしまいます。
出来上がりを器代わりの小鍋に盛り付け、鬼おろしのあんをかけて上からかけ、先端の大根おろしをかけて完成です。
具材はかきと大根がほとんど。でも表面がキャラメリゼになるまで炒めた大根の食感と旨み、鬼おろしの瑞々しい甘みと、仕上げにかける大根おろしのピリッとした辛みにメリハリがあり、満足感が得られる。赤味噌だけでもおいしくできますが、オイスターソースを極少量加えることで、旨味とコクが加わります。
かきは霜降りにしておく。大根は皮を剥いて、根元と先を落とし、真ん中の部分から約2〜3cmの輪切りを6切れ切り出す。根元は鬼おろしに、先は大根おろしにする。ごぼうは乱切りに。ねぎは斜め45度で、小口切りに比べるとやや厚めに切る。
フライパンにごま油をひき、輪切りの大根を中火で約30分じっくりソテーする。15分炒めたところでごぼう、ねぎを加える。火が通ったら、ごぼう、ねぎをフライパンから出しておく。
大根とごぼう、ねぎを時間差で加えることで、ひとつのフライパンで同時の仕上がりに。やや焦げ目が付く程度の焼き加減もポイント。
(2)の大根をヘラでひと口大に切り、フライパンの奥半分に寄せる。手前半分のスペースに調味料Aを赤味噌から入れ、軽く炒めて香りが立ったら、酒、みりん、オイスターソース、砂糖を加えて混ぜ合わせる。さらにかきを加えて赤味噌だれに絡め、ごぼう、ねぎを加えて全体を混ぜ合わせ、小鍋に盛り付ける。
ソテーした大根はヘラで分割することで、赤味噌だれの味が馴染みやすくなる。
別の鍋に調味料Bを加えてあんをつくり、水気を切った鬼おろしを加えて雪見あんにする。(3)に雪見あんをかけ、先端の大根おろし、七味唐辛子をかける。
鬼おろしは水気を切ってあんに加える。先端の大根おろしは、小鍋にあんをかけた上からかける。
大根の旬は年に3回。春、夏、そして秋冬で、今の時期から3月くらいまでが旬の秋冬大根は、春夏の大根に比べて甘みが強いのが特徴です。日本でも古くから親しまれている野菜で、春の七草では“すずしろ”と呼ばれます。根の部分は95%が水分で、ビタミンCと消化酵素のジアスターゼが豊富に含まれています。ジアスターゼは熱に弱いので、消化酵素の働きを期待するなら生で食べるほうが効果的。根元が甘く、先端ほど辛みが増し、火を入れると柔らかくなる中央部分はおでんやふろふき大根にも適しています。
1969年、大分県生まれ。京都『たん熊 北店』、福岡『浄水茶寮』(現閉店)勤務を経て、赤坂『BASSIN』料理長就任。2006年、東京・銀座のレストラン型アンテナショップ『坐來大分』の店長兼料理長に就任。大分県内の生産者と連携し、かぼす、椎茸、豊後牛、関あじ、関さばなど優れた食材の普及に尽力し、現在も顧問を務める。2011年農林水産省「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。2014年、『八雲茶寮』料理長に就任。日本の風土が育んだ食材や郷土料理など、古来からの知恵を活かした料理を身上とする。
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