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1人分 174kcal 食塩相当量 1.0g
こんにゃく米入り道明寺で
華やかに、ヘルシーに。
旬のサワラを使った桜蒸し
漁期を知る魚見桜に見立てて。
春の足音が聞こえてくると、桜の開花が待ち遠しくなります。私の故郷、大分県の日出市には「魚見桜」と呼ばれる樹齢400年を超える山桜があります。「魚見」という名は、かつて漁師たちがこの桜の咲き具合で漁期を見極めたことから付けられたもの。花見は単なる娯楽ではなく、暮らしの知恵の一部だったわけです。今回は、この豊かな習慣、情景に思いを馳せて、魚見桜蒸しという料理をご紹介します。
魚の桜蒸しは、この時期よくつくる料理です。桜のあんは、関西の桜餅「道明寺」に使う道明寺粉でつくりますが、こんにゃく米を混ぜることで、カロリー控えめに。赤い色粉を混ぜて丸め、桜玉をつくっておきます。
魚は旬のサワラを使います。サワラは加熱すると固くなりやすい魚なので、下塩をしたら片栗粉を打っておくと、ふっくらと仕上がる。野菜は長芋を山に、菜の花で裾野に広がる菜の花畑に見立て、春の魚であるサワラを魚見桜をイメージした桜玉と一緒に盛り付けます。
すべての材料をひとつの鍋、同じ調味料で炊くことができるのでご家庭でもつくりやすく、だしにそのまま水溶き片栗粉を加えればあんができます。
長芋はあらかじめ電子レンジで軽く火を通しておくと、短時間で炊くことができます。菜の花は、花と軸を分け、軸の根元の太い部分には縦に切れ目を入れておきます。まずは軸から、やや時間を置いて次に花を、という順で鍋に加えると、火の入りが均一になります。だしに桜の葉の塩漬けをさっと浸すことで、あの桜餅のような香りがだしに移り、その香りに春の訪れを感じられる一皿になります。
こんにゃく粉と混ぜて桜玉をつくるのがやや手間ですが、多めにつくって冷凍しておけば、必要な分だけ解凍して使うことができます。今回は山桜なので丸に仕上げましたが、桜の散り際の時期は紅色の道明寺を、あんに溶いて散らしても風情があります。満開のソメイヨシノの下での花見もいいですが、器の中の山桜を愛でる一皿もぜひお楽しみ下さい。
サワラを約1.5センチの厚さに切り、軽く塩(分量外)を振り、片栗粉(分量外)を打つ。
片栗粉を打つことで、パサつかずふっくらと炊き上がる。
長芋は厚さ約3センチのものを半分に(半月形に)切り、電子レンジで軽く火を通しておく(600Wで3分が目安)。菜の花は2等分に切り、花・葉と軸を分けて、軸には切り込みを入れる。
菜の花は花と葉の部分と軸の部分を分け、軸に斬り込みを入れて、火の通りを均一にする。
こんにゃく米を300ccの水で15分ゆで、ざるで水気を切る。道明寺粉、色粉を溶いた薄い塩水と混ぜ合わせ、4等分にして丸め「桜玉」を作る。
鍋に調味料Aを入れて火にかけ、桜の葉の塩漬けを入れて香りを移し、鍋から出しておく。(2)の長芋を約10分、菜の花を約3分(軸はやや長めに)炊き、長芋には桜の葉を巻いて器に盛り付ける。(3)の桜玉を添え、だしに水溶き片栗粉を加えたあんをかけて、わさびを添える。
桜の葉をだしにさっと浸すことで、香りを移す。
花見は主に桜や梅を愛でることをいいますが、同じ時期に咲く菜の花もまた、春の風物詩的存在。満開の魚見桜と菜の花の、桃色と黄色のコントラストは美しく風情があります。食材としての菜の花(菜花)の旬は冬から春先まで。花が咲き始めると味が落ちるので、できるだけ早いうちに食べましょう。ビタミンB、C、葉酸やカルシウム、鉄などを豊富に含む緑黄色野菜。とくにビタミンCの含有量は野菜の中でも群を抜いています。みずみずしさとほろ苦さ、香味に鮮やかな色合いも、春を味わうのにぴったりです。
1969年、大分県生まれ。京都『たん熊 北店』、福岡『浄水茶寮』(現閉店)勤務を経て、赤坂『BASSIN』料理長就任。2006年、東京・銀座のレストラン型アンテナショップ『坐來大分』の店長兼料理長に就任。大分県内の生産者と連携し、かぼす、椎茸、豊後牛、関あじ、関さばなど優れた食材の普及に尽力し、現在も顧問を務める。2011年農林水産省「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。2014年、『八雲茶寮』料理長に就任。日本の風土が育んだ食材や郷土料理など、古来からの知恵を活かした料理を身上とする。
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