大畑 大介

アスリートライフ

ラグビーは誰でもヒーローになれる生涯スポーツ。
「声を出す」ことで、心身ともに健康に。

僕は現在、ラグビートップリーグ・神戸製鋼コベルコスティーラーズのアンバサダーとして、2016年のリオデジャネイロオリンピック、19年に日本で開催されるラグビーワールドカップ、そして20年の東京オリンピックとビッグイベントが続くなかで、少しでもラグビーに注目が集まるよう、競技の普及に努めています。また、12年からは追手門学院大学客員教授として、「スポーツを通じた人材育成」をテーマに、女子ラグビー部を全面プロデュース。ラグビーのイメージを刷新する新しい活動にも力を注いでいます。

「ラグビー」というと、高い身体能力がモノを言う、泥臭くハードなスポーツだというイメージが強いかもしれません。けれど実際は、さまざまな個性を持ったプレーヤーがそれぞれの得手不得手を補い合うことで成立する競技なんです。例えば、体は小さくても素早く動ける人、走るのは苦手でも力が強い人、不器用でもまわりをサポートする気配りができる人など、それぞれの役割をまっとうすることで、どんな人でも活躍できる。極端な話、試合中に一度もボールに触れずに、ヒーローになることだってできます。
それだけに自分本位ではなく、「チームのために犠牲をいとわない」ということが、素晴らしい選手の条件になります。人間として尊敬されなければ、プレーヤーとしても尊敬されない。運動能力が高いだけでは、チームに必要な選手にはなれないのです。実際、ラグビーのトッププレーヤーには人の痛みがわかる者が多く、そういった面で子どもたちにも良い影響があると思われるので、もっと子供たちがトッププレーヤー達と接する機会を増やすことができればと考えています。

また、ラグビーは身体をぶつけ合うハードなスポーツである一方で、シニアのプレーヤーも多い生涯スポーツでもあります。例えば、シニアの世界ではラグビーパンツの色で年代が区別され、「自分より年代がふたつ上のプレーヤーにはタックルしてはいけない」という原則があります。僕が子どもの頃にラグビースクールのコーチをしていた方が、いまでもプレーを続けていたりもするんです。
ラグビーというスポーツを続けることは、健康寿命を伸ばすことにも好影響があると考えています。大きいのは「声を出す」スポーツであること。15人制であれば、2チーム30人でひとつのボールを追いかけるスポーツですから、他のチームスポーツ以上に、大きな声でボールを要求し、チームでコミュニケーションを取らなければゲームになりません。みなさんもカラオケで大きな声で歌い、ストレスが解消されたという経験があると思いますが、大空の下で体を動かし、声を出すことの爽快感はラグビーならではだと考えます。

年齢も立場も越えた仲間と
ひとつのボールを追いかけることで
精神面でも健康に

そして、精神面が健康でポジティブでなければ、なかなか大きな声は出せないものです。スポーツウェアを一式揃えて、何キロを何分で走れるようになって……というだけでは、僕は「スポーツを通じて健康になった」とは言えないと思います。これからさらに高齢化が進んでいくなかで、社会から取り残される寂しさを感じる人も増えていくでしょう。そのなかでラグビーという競技を続けてもらえれば、年齢も立場も越えてひとつのボールを追いかけながら、「自分が必要とされている」という感覚を常に持つことができ、充実した日々を送ることの一助になると考えています。

DAISUKE OHATA大畑 大介

1975年生まれ。元ラグビー日本代表選手。京都産業大学在学中から日本代表選手として活躍し、98年に神戸製鋼に入社。1999年、2003年と二度のワールドカップに出場し、日本のエースとして世界に名を轟かせ、オーストラリア、フランスのクラブチームでもプレー。03年よりラグビートップリーグ・神戸製鋼コベルコスティーラーズで活躍し、2011年に現役を退いた。現在はコベルコスティーラーズのアンバサダーとしてラグビーの普及に努め、また追手門学院大学客員教授として、女子ラグビー部のプロデュースにも力を注いでいる。ほか、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会アスリート委員も務める。

ラグビーがどこでもだれでも楽しめる、という環境はまだまだ整備されておらず、今後の課題でもありますが、多くの方が考える以上に競技人口は多く、プレーできる場も少なくはありません。初心者の方は尻込みしてしまうかもしれませんが、まずは「楕円形のボールを追いかけて遊ぶ」という感覚で参加してもらえたらうれしいですね。いきなり「タックルをしろ」なんて言われませんから、ビーチや芝生の上でボールを追いかけて走り、多くの人とひとつのことを達成するよろこびを味わっていただきたいです。

2020年の東京オリンピックに向けての盛り上がりは、ラグビーの魅力を伝える大きなチャンスであり、最高のスタートラインになるように、尽力していきたいと考えています。ラグビーは必ずしも細かなルールを知らなくても、そのスピード感、力強さ、小さい人間が大きい人間を倒す爽快感などがダイナミックに伝わってくる、観ていて楽しいスポーツです。ワールドカップと東京オリンピックに向けて、一度、気軽に試合を観ていただきたいですね。
また、日本のスポーツシーン全体を考える上で、2020年がゴールになってはいけないと思います。スポーツを文化として日常に根付かせるためには、アスリートがより積極的に情報発信を行い、スポーツを通じて多くの楽しみが得られる社会を構築していかなければなりません。「クラブ活動の延長」ではなく、本当の意味で生涯スポーツを楽しめる環境を整えるため、何ができるかしっかり考えていきたいと思います。

毎月1回更新Powered by 東京カレンダー

2015.01.19 UP