加賀れんこん

石川県

加賀れんこん

北陸の澄んだ水と多雨の気候、粘土質の土壌が育む 金沢の食文化に欠かせない、伝統の加賀野菜

北陸の澄んだ水と多雨の気候、
粘土質の土壌が育む
金沢の食文化に欠かせない、伝統の加賀野菜

加賀藩の藩政時代より受け継がれてきた「加賀野菜」。昭和20年以前より栽培され、金沢で主に栽培されている野菜を「加賀野菜」と認定し、県内外に広めている。15品目ある中でも、金沢の食文化に欠かせないのが「加賀れんこん」。市内の小坂地区を中心に才田地区、河北潟干拓地などが主な産地だ。土壌は足を踏み入れると抜けないくらい粘りがあり、北陸の澄んだ水と多雨の気候風土によって育まれている。4月中旬に種れんこんを植え付けし、収穫は8月中旬頃から翌年5月下旬までの約10か月間、長期にわたり出荷される。収穫作業は、小坂地区では水を干した状態で行う鍬くわ掘り、河北潟干拓地ではホースの高圧水流を使った水掘り。いずれも地中深く伸びた地下茎であるれんこんを傷つけないよう収穫しなければならず、大変な労力を要する。

今 回訪れたのは、生産者の荒井英一郎さんのほ場(畑)。雪と雨が入り混じる極寒の中、粘土質の冷たい泥に半身をうずめ、水掘りでかき分けるように収穫していく。「肥料をやり過ぎると病害虫が発生しやすくなる。味のいいれんこんを育てるには、土つくりも大切です」と、荒井さん。厳しい冬の時期でも、毎日収穫にあたるのだという。

粘りが強く、もっちりとした食感が特徴。
金沢が愛する栄養豊富なソウフルード

金沢のれんこん消費量は日本一。れんこんにはお金を惜しまないという。地元ではどのように親しまれているのか、近江町市場に赴いた。訪れたのは「北形青果」。シーズン中だけに、泥付きの加賀れんこんが店頭の一角を占めている。「金沢の人間は、れんこん=加賀れんこんと思っているので、あえて産地は謳いません。地中で糖分を蓄えたれんこんは、今が最盛期。美味しい時期なので、お客さんは皆さん食べきれる分だけ購入します」と、4代目北形謙太郎さんは言う。

加賀れんこんは太くて節間が短く、肉厚なのが特徴。デンプン質が多く粘りが強いので、もっちりした食感とシャキシャキとした歯触りが楽しめる。8月下旬のれんこんはアクが少なく、生食も可能。9月以降はデンプンが蓄積され、糖度と粘り気がより増してくる。4節あるのが理想だそうで、先の尖っている部分は柔らかく甘いため、煮物やれんこん汁に。中心部は肉厚で、天ぷらなどに向いている。根本の部分は肉が薄くやや硬いので、きんぴらなどの料理に適している。

節ごとに味わいが異なり、地元では料理に応じて部位を選び購入するそうだ。粘りが強い加賀れんこんはすりおろして軽く水気を切れば団子状になり、味噌汁に浮かべた「団子汁」は金沢人のソウルフード。とろみがあり冷めにくく、体の中からほかほかと温まるという。食物繊維、ビタミンC、カリウム、カルシウムなどを豊富に含み、栄養価も高い。昔から「れんこんは母乳の出をよくする」と言われ、出産祝いに加賀れんこんを贈る風習も金沢ならでは。気候風土、土壌の利を生かしたこの土地にしかない伝統野菜。生産者の思いを汲みながら、大切に食べつぎたい。

石川県の
地産地消事情

長年の取り組みが実を結び、ブランド化に成功。
原木しいたけとぶどうで、全国区への足掛かりに

地産地消に積極的に取り組んでいる石川県では、加賀野菜と同様、能登野菜にも力を注いでいる。世界農業遺産に選出された能登で、今もっとも力を入れているのが、原木栽培しいたけの「のとてまり」。しいたけ菌の品種「のと115」を使い、傘8 センチ以上、肉厚3 センチ以上、巻き込み1 センチ以上の規格を満たした特別選別品で、ブランド化にも成功。初競りには1 箱5 枚入りで1 万6 千円の高値が付けられた。赤く大きなブドウ「ルビーロマン」も石川県が推す農作物のひとつ。10 年以上かけて栽培に成功した高級ブドウで、こちらは1 房50 万円の初値で取引された。地元生産者の取り組みが実を結び、石川ブランドを全国区へと押し上げいる。