馬肉

熊本県

馬肉

加藤清正の時代から薬膳料理として食された 郷土の食文化を象徴する地産地消食材「馬肉」

加藤清正の時代から薬膳料理として食された
郷土の食文化を象徴する地産地消食材「馬肉」

九州の中央部に位置し、有明海に面した熊本地方、世界最大級のカルデラを抱く阿蘇地方、美しい島々が連なる天草地方、日本三大急流の球磨川や寒暖の差が激しい盆地が広がる人吉・球磨地方からなる火の国・熊本。一級河川が平野を潤し、火山灰や塩を含む土壌に恵まれ、豊かな自然資源を背景にした、全国でも有数の農業県でもある。そんな熊本県を代表する地産地消食材が「馬肉」。今回、菊池郡大津町で食用馬を飼育している村山光弘さんの肥育畜舎を訪ねた。

肥後国熊本藩(現熊本県)の初代藩主・加藤清正公の時代から薬膳料理として食べ継がれてきた馬肉。古くは傷薬や熱さましにも使われてきた。県内では昭和40年代より本格的な肉食馬肥育がはじまったという。

「馬はとても繊細。病気やアレルギーに弱く、牛や豚などの家畜と違って育てるのがとても難しい。よっぽどの馬好きでなければ続けられません」と、村山さんは言う。馬は自然交配によって生まれるが受胎率は低く、複数頭では育ちづらいそうだ。

1歳までの肥育前期にはビタミン類を多く含む柔らかな青草を与え、中期から後期にかけては稲わらや、大麦、米ぬかなどの配合飼料を餌に3歳で1トン程度まで成長させる。

旅の4 熊本県 馬肉

高たんぱく低カロリー。
鉄分やミネラルが豊富な馬肉は、大自然と人々の営みの賜物

阿蘇山周辺では放牧が盛んで、平安時代より人の手によって放牧、採草、野焼きといった営みが続けられ、半自然草地を維持してきた歴史がある。良い馬ほど毛並みがよく、背から腹までの深さがあり、胸も大きく、お腹や肩まわりの肉付きがいい。また馬肉は余すところがなく、蹄以外捨てる部分はないという。「馬は自然に近い環境下で育ちます。春の繁殖期は寝る間もないほど忙しく目が離せませんが、手を掛ければ応えてくれる」と、村山さんは目を細める。

馬肉の食習慣がある地域は元来、馬の名産地でもある。国内では青森、山形、福島、長野、山梨でも馬肉は食されているが、全国の消費量の約半分を占める熊本県は「馬刺し」が一般的だ。霜降りのノウハウを培い、また生食を前提としているため食肉センターから流通、飲食店に至るまで徹底した厳しい衛生管理が守られている。牛肉や豚肉と比べ低カロリーで、鉄分やミネラルは2〜4倍含まれる。高たんぱくで、エネルギー源のもとであるグリコーゲンも多く栄養豊富だ。馬肉は融点が低く、口に入れると脂のとろけるような味わいが楽しめる。きめ細やかな霜降りを特徴とした、一頭から5〜6キロ程度しか取れない三枚バラ(大トロ)や、さっぱりとした赤身のロース、肉質が最もやわらかいヒレに、首部分の皮下脂肪であり「コーネ」と呼ばれるたてがみなど、部位もさまざま。ホルモンや心臓の大動脈など希少な部位もあり、レバーは店頭に並ぶ前に売り切れてしまうほどの人気ぶりだ。地元ではお盆や正月などの節目には馬刺しが食卓を飾るという。

熊本県に根ざす郷土食であり、食文化を象徴する馬肉は、雄大な自然と誠心誠意を尽くす人々の営みの賜物。守るべき食の遺産として、次代に繋ぎたい。

熊本県の
地産地消事情

長年の取り組みが実を結び、ブランド化に成功。
原木しいたけとぶどうで、全国区への足掛かりに

地産地消に積極的に取り組んでいる石川県では、加賀野菜と同様、能登野菜にも力を注いでいる。世界農業遺産に選出された能登で、今もっとも力を入れているのが、原木栽培しいたけの「のとてまり」。しいたけ菌の品種「のと115」を使い、傘8 センチ以上、肉厚3 センチ以上、巻き込み1 センチ以上の規格を満たした特別選別品で、ブランド化にも成功。初競りには1 箱5 枚入りで1 万6 千円の高値が付けられた。赤く大きなブドウ「ルビーロマン」も石川県が推す農作物のひとつ。10 年以上かけて栽培に成功した高級ブドウで、こちらは1 房50 万円の初値で取引された。地元生産者の取り組みが実を結び、石川ブランドを全国区へと押し上げいる。