にんじん

青森県

にんじん

北国の風雪に耐え、厳しい寒さにより甘みを増す。 白神山地の麓で育まれるブランドにんじん。

北国の風雪に耐え、厳しい寒さにより甘みを増す。
白神山地の麓で育まれるブランドにんじん。

本州最北に位置する青森県。日本海、太平洋、津軽海峡と三方を海に囲まれ、白神山地や八甲田連峰など広大な森林と肥沃な大地を有する同県は、全国有数の農業王国であり、新鮮かつ豊富な食材によって郷土色豊かな食文化が受け継がれている。「青森りんご」「大間のまぐろ」「田子のにんにく」と地域の名を冠したブランド食材が広く知られる中、2008年に名称を商標登録し、知名度を高めているのが「ふかうら雪人参」だ。今回、青森県西南部の深浦町にある農事組合法人舮作興農組合の坂本正人さんの農場を訪れた。

向かった先は、世界自然遺産で知られる白神山地の麓、標高180〜200mの日本海を見下ろす高台。大根やじゃがいも、長芋なども栽培する145ヘクタールの畑で厳冬期ににんじん栽培をはじめたのは、十数年前のこと。冬は産業が乏しく、出稼ぎで人材が流出するのを防ぐ手立てとして厳冬を逆手に取り、雪下のにんじん栽培に取り組んできた。「ふかうら雪人参」の場合、通常は秋に収穫するにんじんを越冬させ、雪の下から掘り上げる。氷点下の中でも凍結しないように糖分を蓄えるため糖度が上がり、土の中で熟成することで通常のものと比べ格段に甘さが増すのだと言う。

地元のお母さんが1 本1 本掘り上げる。
厳しい気候風土と農家の努力の結晶。

「ふかうら雪人参」の栽培は、春の土づくりにはじまる。ミネラル成分が多い肥沃な土地だが、連作障害を防ぐためイネ科の植物「えん麦」を植え、収穫せずにそのまま土に鋤き込んで一緒に耕す「緑肥」という方法で、養分を蓄えた健康な土づくりを行う。7月1日から種まきをはじめ、秋を越して迎える冬。雪が積もりはじめる12月後半から、いよいよ収穫時期本番だ。

まずパワーショベルで表面の雪を押し退け、トラクターで畑を掘り返していく。ここから先は人手に頼るしかない。地元のお母さんたちが20人ほど向き合いながら列を作り、腰をかがめて冷え切った畑から1本1本引き抜き、傷つけないよう雪が混じった粘り気のある土を拭ってかごに入れていく。深浦町は青森県内でも、積雪量が比較的少ないそうだ。それでも厳寒の日本海から地吹雪が吹き付け、遮るもののない広大な農場で容赦なく寒風にさらされる。「雪が降ろうが風が吹こうが3月まで毎日収穫だ」と、坂本さんは言う。

ふかうら雪人参は特有の青臭さがなく、100%の生搾りジュースとして飲めばその甘みに驚かされる。一般的に流通しているにんじんと比べ、甘味を感じるショ糖は約1.8倍、グルタミン酸は約3.9倍、アスパラギン酸は1.8倍も含まれるので旨みも強い。主に県内で消費されるが、一部首都圏にも出荷されている。「今では足りないほど。100%売り切れだ」と、坂本さんは誇らしげに笑う。

白神山地の自然と肥沃な大地、日本海を渡る寒風と積雪。土地特有の気候風土を条件に、農家の努力によって実を結んだブランド食材。農業の新しいあり方を教えてくれる探訪でもあった。

青森県の
地産地消事情

りんごなど多くの名産品を生み出す青森県。
安全安心、新鮮でおいしい食生活の実現を目指す。

青森県では「食の安全・安心の確保」「食文化の継承」「食料自給率の向上」「あおもり県産農林水産物の需要拡大」と「県民の健康で豊かな食生活の実現」を目指し、県を挙げて地産地消を推進。名産品には、津軽地方を中心に広く栽培されているりんご、陸奥湾で水揚げされるほたて、国内生産量約80%のシェアを占めるにんにく、国内流通量の約4割を占め、全国一の生産量を誇る青森県のながいも、ほどよい歯ごたえと濃厚な旨さが特徴の特産地鶏「青森シャモロック」などがあり、農業・水産業・畜産業が盛んな県でもある。平成16年度から「決め手は青森県産」をキャッチフレーズに掲げ、農林水産物や加工品を積極的に売り込んでいく「攻めの農林水産業」を推し進めている。