京都府

九条ねぎ

歴史によって磨かれ、今に受け継がれる 京都を代表する香り高き伝統野菜。

独特の甘味と高い香りが特徴。
やわらかな緑の葉を食す、
京都の伝統野菜『九条ねぎ』

千年の長きにわたり都として栄えてきた山紫水明の地、京都。世界文化遺産に登録された神社仏閣を数多く抱え、独自の伝統文化を育んできた日本を代表する観光都市だが、平安時代、都に住む人々の「食」を担うため、豊かな伏流水に恵まれた伏見をはじめ、近郊の農家ではいち早く野菜の栽培がはじまったといわれている。三方を山に囲まれた盆地でもあるこの地では歴史によって磨かれ、「色よし、味よし、姿よし」と謳われる香り高き伝統野菜が伝統的に生産され続けている。その中でも、京都人の食生活になくてはならないのが『九条ねぎ』だ。

平安朝前期承和年代にはすでに栽培されていたという記録があり、古くは南区にある東寺近くの九条通で広く栽培されていたことから、その名が付いたといわれている。近年は九条近辺の宅地化により、栽培地域は伏見を中心に市内各地に広がっている。今回は代々農家を営み、京都府内で九条ねぎに特化した生産を行っている農業生産法人「こと京都」の畑を訪れた。

春から夏は細く長く育ち辛味が強く、
冬の寒さで味が濃く、甘味が増す。

「京都の伝統野菜の中で、周年栽培できるのが水菜と壬生菜、そしてこの九条ねぎ。冬と夏とでは味わいは変わりますが、1年を通して楽しめます」とは、代表の山田敏之さん。現在、畑は伏見区、亀岡市、南丹市美山の3か所にあり、時期をずらしながら産地リレーで栽培に取り組んでいる。

伏見区の畑で収穫していた九条ねぎは、昨年10月下旬に植えたもの。通常は80cm程度で、大きいものは1mにも成長する。「九条ねぎは“肥料食い”といわれる野菜ですが、人間が手を加えて無理やり大きくしようとすると栄養過多になり、味が苦くなる。助けてやる程度でいいのです」と、生産を手掛ける加茂亮さんはいう。東日本でおもに作られる根深ねぎ(長ねぎ)は白くのびた茎を食し、九条ねぎのような葉ねぎは葉を食べる。このため可食部である葉が折れてしまうと、商品価値はなくなってしまう。栽培では風が大敵だ。また葉は柔らかく傷みやすいため、収穫はすべて人の手で行わなければならない。畑は広大で腰をかがめての作業は重労働だ。夏場の九条ねぎは2か月半ほどで細く長くのび、やや辛味が強いのが特徴。冬場は6か月と栽培期間は長く、太く肉厚に育つという。霜にあたることで寒さに耐えられるよう葉の内部にぬめりを蓄えるため、味が濃くなり甘味がぐんと増すそうだ。

ねぎ類は古くから薬用野菜として利用され、白い部分にはビタミンCが多く、緑の部分にはカロテン、カルシウム、ビタミンKなどが豊富だ。とりわけ香りの成分アリシンは、ビタミンB1の吸収を助け、血行促進、疲労回復、殺菌、解毒作用などさまざまな効果と働きがある。ぬめりには食物繊維も多く含まれるので、便秘の改善や風邪やストレスで体が弱っている時は意識して摂るといいそうだ。京都の人は薬味にはもちろん、主素材として食べるのが一般的。酢味噌和えや鴨ねぎ、鶏肉と一緒にすき焼きにして食すそうだ。

京都の気候風土に適した、伝統野菜「九条ねぎ」。他のねぎにない独特の風味で知名度もいまや全国区となり、他県でも幅広く親しまれている。

京都府の
地産地消事情

「ブランド京野菜」を次代に受け継ぎながら
新種の京野菜づくりも積極的に行う

長く都だった京都では、珍しい野菜や種を宮中に献上し、他の地域にはない品質のよい野菜を作り続けることで「京野菜」が発達。また仏教の発展とともに精進料理の材料として、野菜は重要な存在として扱われてきた。京都府では野菜や果物など歴史に磨かれた特徴ある農林水産物の中でも、「九条ねぎ」をはじめ「京たけのこ」「賀茂なす」「伏見とうがらし」「海老いも」「堀川ごぼう」「聖護院だいこん」など、品質的・量的に特に優れたものを「ブランド京野菜」(京のブランド産品)として認証し、認知度を高めている。最近では若手の生産者も増えつつあり、伝統野菜を広める一方、京都大学と京都市との協力による新種の野菜の開発も行っている。生産者の顔が見える野菜の直売場も数多く、積極的な地産地消の取り組みで食べ継いでいる。