宮城県

茶豆

肥沃な大地とお天道さまの恩恵に預かる 香りと甘味が際立った“畑の肉”

ゆで立てで甘味と歯応えを堪能し
名物ずんだでなめらかな舌触りを楽しむ。
茶色を帯びた、仙台が誇る枝豆

暑さも本番を迎えた季節、食卓に登場する夏の風物詩であり、ビールの定番つまみといえば枝豆。単なる味の組み合わせだけでなく、偏りがちな栄養を補う意味でも相性は抜群と言われている。大豆の未熟果である枝豆は、豆と野菜の両方の栄養を併せ持つ緑黄色野菜だ。見た目は似ているように見えるが、産地によって緑、茶、黒とさまざまな色の品種が200種ほど存在する。その中のひとつが「仙台茶豆」。山形県の茶豆がルーツとされ、さやを覆う産毛や豆の薄皮が文字通り茶色になる品種で、香りが高く、甘味がとりわけ強いのが特徴だ。今回訪れたのは、宮城県仙台市太白区にある大友農園。この地で3代続く園主・大友仁一さんの茶豆畑に伺った。

太白区は仙台市の南西部に位置し、名取川沿いに東西に広がった扇状をしている。大友さんの自宅周辺は3月11日の震災以降に新築された住宅も多く、住宅街を抜けたところに広々とした茶豆畑はあった。雨が降った後だったせいか、土の香りがひと際濃く漂ってくる。水資源に恵まれ、たっぷり太陽を浴びたような健康的な匂いだ。生い茂る葉には、そこかしこに小さな青ガエルが見えた。大友さんによれば、同地区では4〜5種類の茶豆を栽培しているそうだ。「早生香姫」「香姫」「茶々丸」「早いっちゃ」「夏の調べ」といった種類があり、市場で取り扱ってもらうにはネーミングも大事なのだという。最近では産毛が白く、ゆで上がったさや色が色鮮やかな品種「湯上り娘」の市場性が高く、茶豆をしのぐ人気と聞く。

4月のはじめに種まきをし、75日ほどで収穫する「早生」、80日ほどで収穫する「中生」、90日と生育が比較的遅い品種「遅手」を栽培することで時期がずらせるため、長期間にわたって収穫できる。7月から10月まで出荷されるが、枝豆は初夏、茶豆は晩夏が最旬。茶豆の葉が黄みがかってきたら、収穫のタイミングだ。

生のまま食べてみても、
噛むほどに甘味がにじみ出る

「茶豆は虫が付きやすく、毎日の管理がとても重要です。みなさん実がパンパンに張ったものを選びがちですが、8割くらいの実入りの方が甘味も強く、食感もいい。ほら、こうして生で食べてみて甘味があれば、当然ゆでてもおいしいですよ」と、大友さん。確かに、生のまま食べてみても、噛むほどにじわじわと甘味がにじみ出てくる。畑から枝を引っこ抜き、土をはらうと根に丸い粒がたくさん付いていた。「根粒菌」といって、これがたくさんつくほど甘味が増すという。太陽の恩恵を受けて、なおかつ畑が肥えている証拠だそうだ。

畑から帰ったところで、奥様がゆでたばかりの茶豆をふるまってくれた。枝豆は「お湯を沸かしてから採りに行け」といわれるほど、鮮度が命。枝から切り離すと一気に味が落ちるというから、時間との勝負だ。大友さんのお宅では、たっぷりの湯で塩ゆでしてから、冷水で冷やして色止めし、塩をまぶして食べる。なるほど色が鮮やかで、歯ごたえのいい特有の食感が際立っている。何より甘味が強く、一度食べはじめると手が止まらなくなるほどの味わいだ。「うちでは皆、丼一杯は軽く食べますよ」と、奥様は笑う。

枝豆をゆでてから薄皮を取り除いてすりつぶし、砂糖を加えて風味豊かに仕上げた東北地方の郷土料理「ずんだ」は広く知られているところ。このずんだを茶豆で作り、餅にまぶした「ずんだ餅」は有名で、その昔仙台藩でもお盆に振る舞われた。今や仙台名物として一年中楽しめる。ゆで立てで、あるいは名菓で、それぞれ親しんでみたい。

宮城県の
地産地消事情

三陸沖は世界有数の魚介類の宝庫。
仙台曲がりねぎなど伝統野菜にも注目

日本三景のひとつ松島があり、複雑に入り組んだリアス式海岸が有名な宮城の海は美味の宝庫。寒流と暖流が交わる世界有数の漁場・三陸沖はマグロ、カツオ、サンマなどの魚に、アワビやホタテといった貝類、気仙沼のフカヒレ、河川から流れ込む豊富な栄養分によって育まれるワカメなど海藻類も有名だ。江戸時代、仙台藩は米の一大集積地であったことから、石巻地域は平野部に広大な水田が広がり、「ひとめぼれ」や「ササニシキ」を栽培。柔らかくて甘味のある仙台曲りねぎ、漬物などに加工される仙台長なす(写真)、みょうがたけ、セリなども地産地消食材として広く親しまれている。水産業、農業ともに大震災で甚大な被害を受けるも、関係者の努力が実を結び、復興に向けて一歩一歩力強く進んでいる。