岩手県

うに

磯の香りをまとったオレンジ色に輝く身。 甘味と旨味が凝縮した、三陸の海の恵み

北限の海女の伝統漁法を今なお受け継ぐ。
冷たい海水と豊富な海草を餌に育つ、
復興の兆しも明るい岩手県久慈のうに。

青森県南部から、岩手県、宮城県北部の沿岸域をつなぎ、南北の総延長約220キロに及ぶ、三陸復興国立公園。北部は「海のアルプス」と称される大断崖、南部は地形が入り組んだ美しいリアス海岸が続く、東日本の国立公園では唯一といえる、本格的な海岸公園だ。沖合は親潮の千島海流と黒潮がぶつかり合い、さらに日本海から津軽海峡を越えて対馬海流が混ざり合う、世界三大漁場のひとつに数えられる三陸沖。北上山地の深く広大な森から数多くの河川が流れ込むことで森の栄養分が豊富に供給され、豊かな漁場を育んでいる。マグロやカツオ、サンマ、サバ、イカなどの他、三陸沿岸の大陸棚は狭く、底質は岩礁が多いため、良質な海草を餌にするうにやあわび、なまこ、ホヤの漁が盛んだ。とりわけ、うには北海道に次ぐ産地で、全国2位の出荷量を誇っている。

朝の連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK)の舞台となり、一躍話題となった岩手県久慈市宇部町の小袖漁港。この小袖には「かつぎ」と呼ばれる、磯のうにを素潜りで獲る海女の漁法が有名だ。三陸の海は冷たく、魚貝にとっては恵みでも、素潜りの海女にとっては漁を長く続けていると体が冷え切ってしまう。それだけに素早い潜水が重要だそうで、2メートルから、獲物の多い10メートル以上の好ポイントまで一気に潜水する。10個ほどのうにを獲り、ヤツカリと呼ばれる袋に入れて浮上するのだが、海草が絡みついたり、ヤツカリが岩場に引っ掛かるなど、危険と隣り合わせの漁でもある。今回、7月下旬にうにの口開け(漁)が行われた小袖漁港を訪れた。

毎年恒例のイベント「北限の海女フェスティバル」を翌日に控えたこの日、漁港は準備に追われる人々でにわかに活気づいていた。小袖漁港には35隻近くの船がうに漁を行っている。夏の強い日差しが照りつける中、2キロほど沖合に小舟で乗り出すと、数隻の船が待ち受けていた。青く透明な海を覗き込むと、水中からはブクブクと勢いよく細かい泡が立ち上ってくる。その先にいるのはウェットスーツを着込みボンベを背負ったダイバーで、うにを獲っては網に入れ、それを海上にいる漁師が引き上げる。深いところで40分前後、浅いところなら1時間は潜っていられるそうだ。この地で水揚げされるのは約9割がムラサキウニで、1割がエゾバフンウニだ。イベント前ということもあり、ブルーのケースが満杯になるほどのうにが水揚げされた。

漁港に戻ると、組合員の方々が手際よくうにの殻を開けて、殺菌海水で丁寧に洗いながら販売用生うにの準備をしていた。サイズが大きいからといって、中身が詰まっているとは限らないそうだ。開けたてを食べさせてもらった。色が浅めの方が甘味があり、旨味も強いという。身は大きく濃厚で、旨味が溢れてくる。さすがに獲れたて、鮮度と味わいが違う。小袖海岸では観光向けに「北限の海女」による素潜り実演が行われている。ベテラン海女に混ざり、ドラマさながらに高校生海女クラブのメンバーも加わり、訪れた観光客を楽しませていた。東日本大震災による津波で新築した海女センターが全壊するも、「伝統を絶やしてはいけない」と、活動を再開。海女センターも新たに建設中だった。うに漁も震災前の7〜8割まで回復し、かつての活気を取り戻しつつあると聞く。人々の温かな笑顔と会話が弾む作業風景に励まされ、活況溢れる漁港となることを願う探訪だった。

岩手県の
地産地消事情

あわびに牡蠣、わかめにホヤ。
豊かな三陸の海の恩恵に預かる。

広大な自然が広がり生産環境に恵まれた岩手県は、東北随一の多彩で美味しい農林水産物の宝庫。畜産物では、「前沢牛」に代表される黒毛和種(いわて和牛)や、「赤べこ」の愛称で親しまれている日本短角種の「いわて短角牛」など。全国有数の肉用牛の産地として、年間3万8千頭以上が出荷されている。海産物では全国1位の水揚げ量を誇るあわび、冬を代表する味覚の牡蠣、わかめは生産量もさることながら深い緑、豊かな磯の香り、肉厚で歯ごたえがあると日本一の品質と評価が高い。地元で人気が高いのが「海のパイナップル」と例えられる、ほや。東北以北の沿岸沿いに広く分布しており、天然ものは深水20メートルから30メートルぐらいの海底に生息。種市に受け継がれる伝統産業「南部もぐり」の潜水技術がないと捕れないため、珍重されている。