大分県

関さば・関あじ

潮流厳しい「速吸の瀬戸」にもまれて育つ  一本釣りで価値を高める佐賀関のブランド魚

形は大ぶり、身は締まって脂のりも良し。
活け締めとブランド保護によって
高い信頼を得た「関さば・関あじ」

湧出量・源泉数ともに日本一を誇る温泉王国であり、古くは「豊の国」と呼ばれた大分県。別府温泉、由布院温泉など有名な温泉地を有する「おんせん県」としてPRし、全国的に知名度を高めている。九州の東北部に位置する大分県は、北側は周防灘、東側は伊予灘・豊後水道に面し、総延長772キロにも及ぶ海岸線では変化に富む地形を生かして地域ごとに特色のある漁業や養殖業が盛んに行われている。

魚の宝庫として知られているのが、東海岸沖、太平洋と瀬戸内海を結ぶ豊後水道だ。とりわけ水路が最も狭い部分、大分県大分市(旧佐賀関町)の関崎と愛媛県伊方町の佐田岬に挟まれる「豊予海峡(ほうよかいきょう)」は潮の流れが非常に速いことから「速吸(はやすい)の瀬戸」と呼ばれている。瀬戸内海と太平洋の海流が混ざり合うため餌となるプランクトンが豊富で、潮流の激しいこの海で獲れる魚は身が締まって、市場価値も高いという。その代表格といえば「関さば、関あじ」だろう。魚を傷めない一本釣りの漁法や活け締めによる鮮度管理などにより、ブランド化に成功。高級魚として人気を集めている。今回は関さば・関あじを求めて大分県の佐賀関漁港を訪れ、「洋晃丸」姫野英昭さんの漁に同行させていただいた。

朝6時。まだ暗い中、船に乗り込み佐賀関漁港を出港。30分ほどして沖に出る頃、ようやく空が白みはじめてきた。周りを見渡すと、すでに帆をはった漁船が数か所にかたまっている。そこが漁場のようだ。聞けば、豊予海峡の海底はとても複雑で、海底深くには馬の背のような尾根=海底山脈が続いており、水深60m〜100mに「瀬」と呼ばれる岩礁帯が連なっているという。関さば、関あじは稚魚のときからここに棲みつき、近くを回遊しているそうだ。起伏に富んだ海底は魚の絶好のすみかだが、漁師にとってはポイント。遠方の島だけがわずかな目印になる海上で条件のいい瀬を探し、魚群探知機と経験を頼りにこの日の漁ははじまった。

姫野さんは漁師歴25年のベテラン。波に揺れる船の上で仕掛けを準備し、潮に流されないようエンジンを掛けつつ、ピンポイントで釣り糸を垂らして当たりを待つ。船の操縦と一本釣りをひとりで同時にこなすのだから、なかなか大変な作業だ。釣り糸の先には白や赤、ピンクの小さな疑似針が付いている。「サビキ仕掛け」と呼ばれるもので、白は小エビ、赤やピンクは小魚に見立てており、時期や天候によって大きさや色を変えるのだという。
「漁師はまず潮を見極められること。その潮の流れで魚場を見つけ、仕掛けが真っ直ぐになるよう船を操縦する。関あじも関さばも、海底にいる時はじっとして動かないけれど、海の中層にいる場合は常に動いている。その動きに合わせながら釣るポイントを見定めることが難しい。秋は比較的行動範囲が狭いけれど、春はそれが広くなる。そうした習性を把握して、ポイントを見極めるのだけれど、これがさらに難しい。それを覚えるのに何年かかったことか……」とは、姫野さん。

魚の種類にもよるが、海に投じた釣り糸は短くても60m、長いと100mにもなる。毎回引き上げるのに一苦労だ。しかも一回一回、瀬を変えこれを日に何十回と繰り返す。素人では当たりはまったくわからないが、姫野さんは、釣り糸に伝わる微妙な手の感覚だけで、さばがかかった当たりか、あじがかかった当たりかが分かるという。釣り糸を手繰り寄せ、海底からキラキラと光る魚影が上がってくる様子は、心躍るものがある。漁を終えて港に帰ると、船を生け簀に横付けしての水揚げ。釣り上げられた魚は興奮を抑えるためにいったん漁協の生け簀に放し、1日おいてストレスが解消されたところで活け締めされる。関あじは夏から秋、関さばは秋口から脂ののりがさらに良くなり、食べ頃を迎えるという。一般的なあじ、さばと比べてみると「関もの」は大振りだ。脂ののりがよく、確かに身に締りがあって歯ごたえもいい。

「関さば・関あじ」は商標登録を受けているため、本物を証明するタグがついている。大分県漁協では偽装表示を防ぐため、全国各地の飲食店や鮮魚販売店を抜き打ちで訪れ、監視する制度を実施しているそうだ。豊かな海と特異な地形、さらに鮮度をおとさないための知恵と工夫や徹底したブランドの保護があってこそ、「関さば・関あじ」として信頼を得ていることも覚えておきたい。

大分県の
地産地消事情

市場評価の高い関さば、関あじに続け!
ブランドチャレンジ魚種を認定。

関さば、関あじが全国有数のブランド魚になった大分県では、これらに続く品目づくりに挑戦。太刀魚、真鯛、養殖ヒラメ、ハモ、養殖ブリ、真あじ、真さばの7魚種を「The・おおいた」ブランドチャレンジ魚種に認定し、ブランドの育成・定着に力を注いでいる。この他、全国一位の生産量を誇る椎茸をはじめ、かぼす、臼杵ふぐ、豊後牛、豊のしゃもなどの特産品もあり。温泉の噴気を利用して山海の幸を蒸し上げて食べる別府独特の料理方法「地獄釜料理」、特産のかぼすをたっぷり搾って味わう「臼杵ふぐ」、新鮮な魚の切身を、醤油、酒、ミリン、ショウガ、ゴマなどを合わせたタレに漬け込んでからいただく郷土料理「りゅうきゅう」など。地元ならではの食文化が大切に受け継がれ、地産地消の取り組みに一役買っている。