愛知県

愛知早生ふき

独特のほろ苦さが魅力  春を呼ぶ日本原産の多年草

知多半島の水はけのよい砂譲土と
木曽水系の清冽な水で育まれた
「愛知早生ふき」

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。戦国時代に名だたる三英傑を輩出した愛知県(尾張・三河)は、木曽三川(木曾川・長良川・揖斐川)によって形成された肥沃な大地・濃尾平野を北西部に持つ。それゆえ水田が多く、花きや野菜などの近郊農業も盛んだ。特に1961年に通水した愛知用水は、木曽川水系の清廉な水を尾張丘陵部から知多半島に行きわたらせ、農業生産を著しく向上させた。

そんな愛知県の南に突き出た知多半島は、水はけのよい砂譲土によるなだらかな丘陵地。その土地を利用して作られているのが、出荷量・産出額共に日本一の「愛知早生ふき」だ。知多半島におけるふき栽培の歴史は古い。江戸時代末期に知多郡加木屋村(現東海市加木屋)の庄屋・早川平左衛門が自家用に栽培していたふきが、在来のふきより早生性を持ち、高品質だったことから徐々に全国に広まり、昭和の始めに「愛知早生ふき」と名づけられたのだ。香り高く瑞々しい「愛知早生ふき」は、2002年には「あいちの伝統野菜」に選定された。

1月中旬、知多半島の岡田地区で三代に渡り、ふき栽培を営む竹内延宏さんを訪ねた。「野生のふきは雌雄の株が異なりますが、『愛知早生ふき』は雄株しか存在しないため、地下茎を株分けすることによって増やすんです」と道すがら説明してくれたのは、JAあいち知多の森岡哲生さん。ほどなくしてクルマはのんびりした田園風景に佇むビニールハウスの前へ。ハウスに入ると、高さ1mほどのすっきりした立ち姿と鮮やかな緑が美しい「愛知早生ふき」が出迎えてくれた。それと同時に、抜けるようなふきの香りと温かな土の香りが鼻腔をくすぐる。「ハウス内は無加温ですが、ビニールを二重張りにしているので、冬場でも15度ぐらいになります。陽が昇っている日などは、Tシャツで作業をするぐらいですよ」とは竹内さん。

ハウス内での刈り取り作業はスピードが要求される。15センチほど盛り上げて藁をかぶせた畝ギリギリに、スナップが効くよう柄を取った鉈をあて、流れるようにふきを刈りこんでいくのだ。そのたび、茎からきらきらと水が滴り落ちる。水を滴らせた新鮮なふきはアクが強いため、切った先から色が変わってゆく。そこで藁の上に積み上げたふきがまとまったら作業小屋に運び入れ、ひとつひとつ丁寧に大きさを選別。その後、すぐさまビニールで葉ごとくるんで段ボールに入れ、11時までに出荷するのだ。収穫の最盛期には、陽が昇るのと同時に収穫作業を行うという。

何かと手がかかる「愛知早生ふき」は、管理をしっかり行い、追肥を施せば1年で3度収穫できると言われている。大まかな作業工程は次の通り。6月頃に路地栽培の苗場からふきの根を掘り出し、水で洗う。次に、根を木のりんご箱に入れて2か月ほど予冷貯蔵庫に保管、人工的に冬を体験させる。そこで発芽を促進させ、8月ごろに定植するのだ。一度目の収穫は10月上旬。その後、寒さにあてて刈り残した部分を枯れさせて取り除き、追肥した後に二重にビニールを張って、翌年の2月初旬と4月下旬に収穫するのだ。ちなみに秋のふきは加工に適した大きなサイズに育ち、春のふきは柔らかくサイズは小さめだという。

この辺りは、鈴鹿おろしや伊吹おろしと呼ばれる強い季節風が吹くため、冬場はビニールハウスでの栽培が必須。ふきは葉と葉がこすれるだけで傷ついてしまうほど繊細なので、それを避けるためだ。ゆえに、ビニールを張り直す作業は年間、何度も行わねばならず、生産者は1年中、何かしらの作業を余儀なくされるという。

つぎに竹内さんに苗場を見せてもらった。路地に広がる苗場は一見、葉が枯れて全体的に茶色っぽく見えるが、枯れた葉の影に小さなつぼみ状のものがそこここに。ひとつ刈り取ったものを手に乗せてもらい顔を近づけてみると、それは花が開く前のふきのとうだった。まだ花が咲くのは先だというのに、涼やかなふき独特の香りがする。「愛知早生ふき」は苦みが少なく、和食はもちろん薄くスライスしてパスタに入れるなど、洋食に取り入れても香りと食感を楽しむことができる。春の到来を告げる「愛知早生ふき」、日々の食卓に取り入れてみてはいかがだろう。

愛知県の
地産地消事情

生産量全国上位の農産物がいくつも。
名古屋コーチンも全国ブランドに

日本三大工業地帯のひとつ中京工業地帯を有することから、工業県のイメージが強い愛知県だが、生産量全国上位の農産物がいくつもある。特に肥沃な濃尾平野では野菜や花の生産が盛んで、キャベツ、しそ、いちじく、ふき、ブロッコリー、うずら卵、菊、バラ、洋ランなどは全国トップクラスである。養鶏業も盛んで、こくのある肉と締まった歯ごたえが人気の名古屋コーチンは、全国的なブランドになっている。愛知みかわ豚やみかわ牛、和牛と乳用牛を交配することで低価格&高品質を実現させたあいち牛など畜産関係も勢いがある。また、伊勢湾、三河湾を有する漁業県でもあり、県は2012年に冬場のふぐと海苔、春のアサリとコウナゴ、夏のシラスとウナギ、秋のスズキとガザミを「あいちの四季の魚」に選定した。