和紙 ゆしまの小林

元気が出る会社

和紙

ゆしまの小林

丈夫さと美しさを兼ね備え
無形文化遺産になった「和紙」。
見て、触れるだけで癒される
世界に類を見ない、その魅力とは。

2014年11月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「和紙 日本の手漉和紙技術」の無形文化遺産への登録を決定した。前年の「和食」に続く吉報で、2020年の東京オリンピックに向け、さらに日本の伝統文化に世界の視線が集まりそうだ。
数千種類の和紙を扱い、伝統的な手染め作業の公開、折り紙教室などからその魅力を広く伝えているのが、江戸時代から続く老舗和紙専門店「ゆしまの小林」。四代目社長の小林一夫氏に、日本の伝統・和紙と折り紙について伺った。

和紙とは一般的に、洋紙に対して日本で発明された紙を指す。今回、無形文化遺産への登録対象になったのは、クワ科の植物「コウゾ」を使った細川紙(埼玉県)・本美濃紙(岐阜県)・石州半紙(島根県)で、すべて手漉きで作られているそうだ。
「もちろん“機械で作ったら和紙ではない”ということはありませんが、この3種はいずれも素晴らしいものです。和紙の特徴は、その丈夫さ・柔軟性と美しさ。用途は幅広く、みなさんもご存じのように襖や屏風など家具にも使われてきましたし、人形やインテリア、ちぎり絵・はり絵のほか、さまざまな工芸にも利用されています。中でも当社が力を入れてきたのが、伝統的な『和紙折り紙』です」

同社は明治初年、文部省の依頼により「折紙」を製作。現在では、その魅力を伝える「おりがみ会館」を設立し、世界中の折り紙作家による作品を展示し、日々、基礎的な折り方を学ぶミニ講習から、華やかなくす玉づくりなどの教室を開いている。単に“折り方”を教えるだけなく、和紙をはじめとする素材を重視し、また伝統的な「折形礼法」なども伝えているのが特徴だ。
「折り紙というと、鶴を始めとする動物の形を作る“遊び”を思い浮かべる方が大半でしょう。しかし、当社がもっとも伝えたいのは、例えばお祝いやお悔やみの『のし袋』だったり、あるいは季節の飾りや、食事の場を華やかにする箸立てなど、質のいい和紙折り紙を使ってサッと折ることができる、日常に根ざした“実用”の折り紙です」

学校で習った折り紙を考えると、ついつい、ズレが出ないよう、正確に折ることを考えてしまうが、「多少ズレていたって問題ありません。そういうことを気にする人の性格のほうがズレているんですよ(笑)」と小林社長。実際、ウサギやヒツジを模した箸立てから、縁起のいい紅白のお年玉袋まで、数十秒で簡単に作ってしまう。取材中、工房を見学に来ていた若い女性に、即興で作った“和紙の指輪”をプレゼントする一幕もあった。

「大切なのは折り紙の意味を知り、日本古来のおもてなしの心を養うことです。例えば、冠婚葬祭ののし袋に、お金を入れ忘れてしまう人がたまにいます。これは出来合いの袋を使い、礼やおもてなしの心を欠いた状態になっている、という原因が大きいでしょう。風合いのいい和紙を使って、自分でパッと折ることができれば、より心もこもりますし、中身を忘れてしまうこともないはずです。そもそも“包む”というのは日本の大切な文化。海外ではプレゼントの袋をその場で開けることが多く、日本ではあとで開けるという作法があることからも、そのことはよくわかります」

日本古来の“もてなしの心”を
現代に伝える「実用の折り紙」
指を細やかに動かすことで、
健康効果も期待される。

一方、指を細やかに動かす折り紙には、健康効果が期待できると語られることも増えている。同社の折り紙教室には、20年、30年と通っている常連も多い。

「実際、教室の参加者を見ると、高齢でも元気な方が多いんです。指を動かすことで脳が刺激され、想像力が呼び覚まされるものだということを体感しています。また、私がよく言うのは、『折り紙は指の森林浴だ』ということです。そもそも紙は、植物を水に溶いたものが原料になっています。清少納言の時代から、女性は気持ちが苛立つと和紙を見て、触って心を和ませていたとされますし、心身ともに癒しを得ることができる。老化防止や傷病のリハビリに、単に指を動かす運動をするより、折り紙の方が楽しく、はるかに効果的だと考えています」

和紙折り紙は長く楽しめる趣味であるとともに、国際化の時代、言葉のいらないコミュニケーションツールとしても、折り紙は有効だという。小林社長はこれを「紙ニュケーション」と表現している。

「日本を代表する伝統文化の中で、折り紙ほど老若男女を問わず多くの人に喜ばれるものはありません。私は海外に行く際に必ず、ポケットに折り紙を入れて出かけますが、箸袋やペーパーナプキンで手早く折れるモチーフを調べておくといいでしょう。和紙の話からは少し離れてしまいますが、チップを渡す習慣がある国では、その国の紙幣で動物などを折ってプレゼントすると、お互いの気持ちが華やぐかもしれない。指先ひとつで人に驚きとよろこびを与えられますし、今ではポケットに折り紙がないと不安になるくらいです(笑)」

日本人が知っているようで知らない、和紙と折り紙の深い世界。無形文化遺産への登録も追い風となり、さらに注目度は高まりそうだが、小林社長は何を思うのか――。

「注目が集まるのはとても素晴らしいことで、きちんと需要が高まり、真摯な仕事をしている職人たちが報われればいいと思います。また折り紙について、私が常々思っているのは、もっと気軽に、誰もが楽しめるものになればいい、ということです。遠く昔からある折り方について著作権が主張されたり、人に教えるのに資格が必要だと考える人がいたり、堅苦しいものになってしまっている部分がある。『伝統』とはもっと、遊びのあるものとして日常に溶け込むべきだと考えています。教室や著書を通じて、そのことをしっかり訴えていきたいですね」

PRESIDENT

KAZUO KOBAYASHI小林 一夫

和紙の老舗「ゆしまの小林」四代目社長。国内外での展示や公演を通じ、和紙・折り紙の魅力を広く伝えている。お茶の水おりがみ会館館長、内閣府認証NPO法人「国際折り紙協会」の理事長も務め、折り紙の第一人者としても知られる。近著に『折り紙は泣いている』(愛育社)など。

COMPANY

日本の伝統「和紙」を守り、
魅力を広める、江戸時代から続く老舗

ゆしまの小林
1858年創業、江戸時代から続く和紙専門の老舗。店舗を兼ねた「お茶の水おりがみ会館」(東京都文京区)には展示室もあり、和紙染めの作業を見学することもできる。和紙折り紙の製造販売も手がけ、各種の折り方教室も開いている。

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2014.12.15 UP