アイメック農法 メビオール株式会社

元気が出る会社

アイメック農法

メビオール株式会社

フィルムの上で育てる、
新しい農業  水問題、食糧問題の改善を目指す、
「アイメック農法」とは?

“土”ではなく、“フィルム”の上で農作物を育てる――日本の先端技術を使った新たな農業が、世界中から注目を集めている。アイメック農法と名付けられた次世代農業技術を開発・推進しているのが、95年設立の早稲田大学発ベンチャー、メビオール株式会社だ。開発の経緯とそのメリット、今後の可能性まで、同社の代表取締役社長で、工学博士での森有一さんに聞いた。

日本は先端高分子材料、“フィルター=膜”の分野で世界をリードしており、環境の分野では海水の淡水化、エネルギーの分野ではリチウムイオン電池のセパレーター、医療の分野では透析膜など、多分野にわたって活用されている。森さんはなぜ、それを農業分野に応用しようと考えたのか。
「私は30年近く膜の開発を行い、特にメディカルの分野で応用してきました。そのなかで、95年頃から地球温暖化、水不足や食糧問題、あるいは食の安全性や栄養の問題が大きく取り上げられるようになり、これを膜の技術で解消できないかと考えたのです。温暖化、水不足、食糧不足は、すべて植物にかかわる問題です。工業の世界では石器に始まり、金属、プラスチック、半導体と材料は進化してきましたが、農業分野ではいまだに“土”と“水”の世界にとどまっている。そこにイノベーションを起こすことができるのではないか、と」  アイメック農法の仕組みは、「保水性のあるフィルムの上で作物を育てる」という、言葉にするとシンプルなもの。農業で重要になるのは、作物に合った「土壌」と「水の与え方」だが、フィルムがその両面で煩雑さをなくし、どこでも、だれでも同じクオリティの作物を育てることが可能だという。

「フィルムの上で育てるため、“土を作る”という難しい工程が必要ありません。また“水やり10年”というほど、農業においては水の与え方が重要になりますが、アイメック農法では植物が、常にフィルムに蓄えられている水と養分を必要量吸収してくれます。そのため新規参入もしやすく、現在当社が推進しているフルーツトマト農業においては、若い農家さんが多いんです」

旧来の農業に対するイメージからすると、「土に多くの養分があるはず。フィルムで育った作物の栄養価は問題ないのか」とかんがえる人も少なくないかもしれない。しかしアイメック農法で育った作物は、栄養価・安全性ともに高い水準にあると、森さんは語る。実際に同農法で育てられたフルーツトマトを食べてみると、とても甘い。糖度計で計ってみると、一般的なトマトの「4」と比較して3倍近い、「11」という数値を記録した。
「アイメック農法は、植物を甘やかしません。つまり、植物はフィルムに蓄えられた水と養分を一生懸命に吸収する必要があり、毛細根を張り巡らせます。そして、さらに吸収を高めるために、糖分やアミノ酸を多く作るため、とても栄養価が高くなるのです。また、フィルムにはナノサイズの穴が無数に空いていますが、これが水と養分は通しても、有害な菌やウイルスは通さない。そのため農薬も少なくて済みますし、安全性も高いのです」

アイメック農法は広く受け入れられつつあり、東日本大震災に伴う津波で、土壌に壊滅的な被害がもたらされた岩手県陸前高田市では、大規模農場でフルーツトマトの栽培がスタート。農業にとって不毛の地である砂漠が広がるドバイ(アラブ首長国連邦)でも、50002の施設で生産が進められている。
「中東でなぜ石油が豊富なのか――それは、かつて大森林が広がっていたから。植物にとって最大の栄養素である太陽光が豊富な砂漠は、土壌と水の問題を解決できるアイメック農法にとって最高の場所なんです。ただ、砂漠のど真ん中では電気も水もない。そこで、日本の先端高分子技術が物を言います。ソーラーエナジーで電力を供給し、塩分濃度が高い地下水を吸い上げて濾過して使う。そのように自給自足の環境を作り上げ、人が集まる街、オアシスを作ることができればと考えています」

アイメック農法においては一般的な水耕栽培で必要となる大量の養液を循環させ、また殺菌する設備が必要ないため、初期投資額が抑えられる。「栄養価」と「量」はトレードオフの関係で、水の供給量の多寡で比較的容易に調整できるのも、アイメック農法のメリットだという。
「また一般的な農業の場合、耕地面積が増えるほど土などの管理のコストが増えますが、フィルムの場合は大量生産により逆に安くなっていき、いずれはほとんど無償で提供できるようになるでしょう。省資源、省エネルギー、省コストで、ノウハウも簡単。誰にでもできる農業なのです」

もちろん、課題もある。森さんは現在、さらに大きな作物――果樹の栽培に同農法を転用したいと考えているが、それにはフィルムのさらなる改良が必要になるそうだ。
「果樹は根が強く、現在のフィルムだと破ってしまいます。さらに強度を上げ、また10年は替えずに済むフィルムを作らなければなりません。アイメック農法により、環境に左右されず栄養価の高いブドウを作ることができる技術を確立して、それが素晴らしいワインになったら素敵でしょうね」

透析膜を通じて血中の老廃物などを除去し、再び体内に循環させる人工透析が好例だが、フィルム=膜とは、「循環させる技術」と言い換えることができるかもしれない。そして、アイメック農法のフィルムの原料となるハイドロゲルは植物由来であり、「過去の植物が、未来の植物を育てる」(森さん)という、新しいサイクルを生むことにもなりそうだ。被災地や砂漠地帯ですでに成果を上げ、減少を続けている農業人口をプラスに転じさせる可能性もありそうな、アイメック農法。一次産業から日本を、そして世界を元気にしてくれそうな、最新技術だと言えそうだ。

PRESIDENT

YUICHI MORI森 有一

メビオール株式会社代表取締役社長、早稲田大学理工学術院総合研究科 工学博士。医療分野で開発された膜およびハイドロゲル技術により植物を栽培する新農業技術「アイメック」を開発。95年にメビオール株式会社を設立し、アイメック農法を推進する。趣味はウィンドサーフィン。

COMPANY

日本が誇るフィルム技術で、農業の新時代を切り拓く

メビオール株式会社
1995年設立。フィルムを使った新農業技術「アイメック」を展開して、世界100カ国以上で特許を取得。2009年に国内で初のトマト生産が始まり、現在の普及面積は55エーカー超に及ぶ。トマト以外には、メロン、イチゴ、パプリカやレタスなど、葉野菜生産を計画しており、将来的には果樹の栽培にもチャレンジする予定。
http://www.mebiol.co.jp/

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2015.04.28 UP