シエスタ=昼寝

ヘルシー探偵団

シエスタ=昼寝

企業が昼寝の制度を導入したり、
街には“お昼寝カフェ”も登場。
昨今注目されるシエスタ=昼寝の効用について考えます。

 

シエスタ=昼寝

暑く寝苦しい日々が続く夏の時期。世界的に見ても平均睡眠時間が少ない日本人にとっては、厳しい季節と言える。そんな中、疲労回復や作業効率アップの習慣づけとして“昼寝”の効果が注目されてきている。その効用を調査すべく、まず訪れたのは、「うつ伏せ姿勢による昼休みの短時間の睡眠の効果」について研究している東海大学情報通信学部の辛島光彦教授だ。

「人間には概日リズム、いわゆるサーカディアンリズムというものがあります。一般には体内時計と言われるもので、我々が1日を送る約24時間のリズムですね。それは、体温が18時から20時に最高となり、3時から5時に最低になるというものです。その一方、眠りを研究されている広島大学の林光緒教授の論文にもありますが、眠気というものは、約半日周期に生じることが判っています。眠気には、半日リズム=サーカセミディアンリズムが存在するのです。つまり、人間には1日にふた山の眠気があり、一つ目の山は明け方にやってきます。明け方のサーカディアンリズムによる眠気がいちばん眠いのですが、それは多くの人が眠っている時間帯。問題は二つ目の山の午後の眠気で、午後3時ころにサーカセミディアンリズムによる眠気が訪れます。昼食をとるとお腹に血液が集まって眠くなるという話がありますが、実は食事の影響を取り除いても、あくまで“人間のリズム”として午後3時ころ眠くなるのです」

ヨーロッパなどで文化として根付いている“シエスタ”は理に適っているということだ。では、寝方として、どのような“昼寝”が望ましいのだろうか。

「日中の仮眠は夜の主睡眠の妨げになると言われてきましたが、適切な仮眠=昼寝であれば夜の主睡眠に影響を与えることはありません。20分以上の睡眠では脳波に徐波が出現しはじめ、深い眠りに入りはじめます。これ以上眠ると、起きた際に強い眠気(睡眠慣性)が生じますし、夜間の徐波睡眠=深い眠りが減少してしまうため悪影響が出る。つまり、昼寝は15分から20分の短時間がいいということになります」

睡眠慣性については、電車などで短い時間の居眠りをすると、起きた時快適だが、長い時間昼寝している途中に起こされるとボーっとした感じが残るのは誰もが経験していることだろう。このように、辛島教授は“浅い眠り”の効用を説く。

「私の専門は人間工学ですから、仕事場での問題としてこれを捉えています。午後の眠気をどうすればいいか。午後の仕事を能率よくするためにはどうすればいいか。これを考えているのです。それにはまず、15分〜20分という短時間の睡眠をとることが大事。次に大切なのが、寝る時の姿勢です。ベッドで横になるのがいちばんいいですが、オフィスを想定しているのでそれは現実的ではない。では、椅子に座って仰向けで寝る場合はどうか。これは眠りに入るのが遅くなる傾向があります。姿勢が不安定だというのがひとつの理由でしょう。おすすめは、机にうつ伏せになることです。仰向けよりも早く眠りに入れます。このとき、目を腕に押し当てないよう注意してください。小さな枕があると寝やすいと思います」

そして、この短い睡眠を習慣化することも、大切な要素になるという。

「習慣化した場合、仮眠の際に早く入眠状態になります。また睡眠はリズムですから、起こされる(強制覚醒)よりも自分で起きた(自己覚醒)ほうがいい。前述の林教授のグループは、仮眠の際に自分で起きた方が睡眠慣性がより抑えられることを示しています。ですから、昼寝を習慣化して、身体に起きるリズムを覚えさせることが大事だと思います。久留米大学による福岡県立高校の調査では、生徒が午後の授業に集中して臨めるようにと、一斉に昼寝をする時間を設けました。結果、勉強に対するやる気や成績の上昇が見られたということです。“いい昼寝”がさまざまな現場に持ち込まれるといいですね」

このように、作業効率をアップさせる効果のある昼寝=シエスタを、制度として導入した会社もある。大阪に本社を置くITベンチャーのHUGOは昼休みがなんと3時間。同社代表の中田大輔氏に話を聞いた。

「欧米でビジネス展開を図ろうとした時、シエスタをする人たちを目の当たりにしました。長い休み時間をとりながら働く、そういう働き方があるんだと思った。自分たちの仕事はマーケティング戦略などアイデアが重視され、集中力が必要とされる仕事。なので、すぐに午後1時から4時までを休みとする昼休みを導入しました。昼休みの使い方は自由です。ジムに行ってもいいし、映画を見てもいい。ただ、みんな、20分〜30分くらいは寝ていますね。そうしたほうがすっきりして、そのあとの仕事がはかどることが、経験的にわかってきたんです。導入して7年になりますが、マイナスの要素はありません。気持ちの余裕が生まれたり、午後の集中力が上がるなど、プラスの効果だけがあったと考えています」

これはまさに、昼寝が習慣化されることで、効率や意欲が上がっている事例だろう。しかし、こうした会社はまだ多くはない。そんな中、効果の高い昼寝をサポートする場所が東京・神保町に登場した。「女性のためのおひるねカフェ corne (コロネ)」がそれ。店長、塚島早紀子さんは語る。

「2006年に睡眠を記録できるサイト『ねむログ』を立ち上げました。そうすると睡眠に関心をもつ人が多いことがわかると共に、不満もまた多いことがわかったんです。仕事をしているときに眠気に襲われ、非常階段で寝たり、トイレで寝たという女性が多くいることを知りました。そこで、そんな方たちをサポートする、“おひるねカフェ”というものをはじめてみようと」

そこには、さまざまな睡眠に関するグッズが並ぶ。レンタルウェアもあり、枕は17種類用意され好きなものを選ぶことができる。メイクを直すスペースもあり、女性にとっては至れり尽くせりだ。

「女性は漫画喫茶などにはやはり抵抗があるようですね。一日の中での切り替えをするための場所。リラックスできる場所として機能しているんだと思います。みなさん、自分でもびっくりするようですが、横になられてすぐに睡眠に入られます。食事を含め、平均の滞在時間は1時間10分です。リピーターも増えています。今後はこのお昼寝ルームを企業に導入していただけないかと考えています」

作業効率のアップや休息を目的に昼寝をすることが、ひいてはその会社やその人のアイデンティティになる。「正しい昼寝=シエスタ」が、会社にも個人にも広がり、日本でもひとつの文化として定着してもらいたいものだ。

東海大学情報通信学部 辛島光彦教授

HUGO

http://www.hugoinc.us/

女性のためのおひるねカフェ corne (コロネ)

http://www.corne.jp/

毎月1回更新Powered by 東京カレンダー

2014.08.18 UP