シニアの新しい趣味・生き方

ヘルシー探偵団

シニアの新しい趣味・生き方

かつてはゲートボールや
ゴルフが主流だったシニア世代のスポーツ。
しかし、いま、今までになかった趣味が広がり、
新たな生きがいを生み出している。

 

シニアの新しい趣味・生き方

日本の高齢化は、長らく社会問題となっている。平均寿命も伸び、高齢者の生き方自体を考え直さないといけない時代だ。そんな中、かつてとは違ったスポーツ・趣味を楽しみながら、目標を持って、賢く生きるシニアが増加。その現場を回ってみた。

神奈川県・藤沢にある山神ボクシングジム。シニアの練習生を積極的に受け入れているボクシングジムだ。平日午後1時にそのジムを訪れると、シニア・ボクサーたちがストレッチをしたり、シャドウ・ボクシングをしたり、無心に練習をしていた。会長の山神淳一会長は言う。
「最近、シニアの練習生は増えていますね。うちに来る理由はさまざま。いちばん多いのは、健康のため。会社の検診で数値が悪かったり、メタボと診断されたような人がそれを改善するためにボクシングをやりたいということで来ます。実際、20キロくらい落とした人もいますよ。次に多いのは、もともとボクシングを見るのが好きでいつかやってみたいと思っていた人。こういう方は真剣で、練習も続きます」

この日、練習していたシニアのひとり、森田穂三郎さんは67歳。もともとボクシングが好きではじめたという。

「テレビだと新人の試合は見られませんが、ジムの選手の応援に行って、新人たちの試合を見ると、これがまた面白いんです。すっかりハマってしまいました。あとは、若い人と交流することができるのが嬉しいし、楽しい。心まで元気になった気がします。いつまでやるか? 元気なうちはずっと通いたいと思っていますよ」
会長がミットをつけ、リングでシニア練習生のパンチを受ける。パンチが入った音がジムに響く。そのまわりにいる人の動きも実に本格的だ。山神会長は言う。
「うちのジムはボクササイズとは違うから。プロがやるような練習を行いますし、そういう指導をします。初心者の方には、もちろんストレッチなど大切な準備についても教えていきます。シニアの方々には、もっと気軽にチャレンジしてほしいと思っています」

一方こちらは、海を楽しむスキューバ・ダイビング。高齢者には難しいように思われるが、実際には、シニアダイバーは、昨今増加中だという。ダイビングショップ「ミッド・サマー」の代表・家接剛志さんに話を聞いた。
「経験者の方がシニアの年齢に達したと思われるかもしれませんが、実際にはそれほど経験のない方がリタイアなどをきっかけにスクールにいらっしゃるケースが多いんです。若い時からやってみたくて、時間ができて本格的に始めたいという方たちですね。うちでは、積極的にシニアを受け入れていまして、“100歳までダイビングをしましょう”というメッセージを発信しています。筋肉トレーニングや姿勢改善プログラムなども実施し、シニアが海に出ても大丈夫なように、基本から指導しています。海外でのツアーなども行っていまして、みなさん、ダイビングが新しい生きがいになっているようです。現在は、70代の方までがいきいきとがんばっています。いつか、100歳のダイバーが出るまで、頑張っていきたいですね」

そして若者に人気のダンスも、シニア層に広がりを見せている。遠野ダンススタジオの遠野祥さんに話を伺った。
「ダンスは、合理的に全身を動かし、基礎代謝も上がりますので、シニアの方々には向いていると思います。ほかのスポーツと違うのは、ピアノとか絵画のようなアートの側面をもっているということ。勝負ではなく、自分のセンスが試される。自分と向き合う作業でもあります。そして、自分の身体を改めて見つめ直す。そういう意味では、ヨガなどに近いかもしれません。シニアの方は増えていますが、やはり女性が圧倒的に多く、せっかく男性のシニアの方が入っても気後れしてしまうことがあります。もっと男性のシニアの方々にもチャレンジしてほしいですね。また、そうした人たちが発表できる場をもっと増やしたいと思っています。例えば老人ホームに行って、シニアの方たちがダンスをお見せする。それをみて老人ホームの方が元気になれば、すごくいい循環が生まれると考えています。発表する場ができれば、目標が生まれます。目標を持つことはダンスを続けていく意味でもとても大切なことだと考えていますので」

専門家は、こうした動きをどのように見ているのだろうか。東北大学加齢医学研究所特任教授であり、「年を重ねるのが楽しくなる![スマート・エイジング]という生き方」(扶桑社新書)を発刊した村田裕之さんに話を聞いた。まず、スマート・エイジングとは、どのようなものなのだろうか。
「私たち東北大学では、“エイジング(加齢)による経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること”と定義づけています。その第1段階で大切なのは、まず、個人として“賢く歳を加えていく”ことです」
その秘訣は7つあると、村田教授は語る。
「前提として、要介護・寝たきり状態になる原因についてお話ししましょう。トップは脳血管性疾患、いわゆる脳卒中です。2位が認知症。3位が高齢による衰弱。4,5位が関節疾患、骨折・転倒となります。脳と運動器にかかわるものが多く、これらを健康に維持すれば元気に暮らすことができると言えます。スマート・エイジング第1の秘訣は、有酸素運動をすること。血中の脂肪を燃焼することから生活習慣病の予防に役立ちます。近年は、ウォーキングするシニアが増えてきていて、非常にいい傾向だと思います。第2の秘訣は、筋力トレーニングを行うこと。ウォーキングだけでは、転倒・骨折予防に有効な腹筋・背筋などのなど体幹部の筋肉は付きません。歩行にいちばん大切なのは大腰筋です。こうした筋肉を鍛えてください」
運動だけでなく、メンタルな部分に関しても秘訣があると言う。
「第3の秘訣は、明確な目標を持つこと。リタイアすると、それまでの会社のルーティンがなくなり、生活の“リズム”がなくなってしまいます。これは脳にとってよくないことです。目標があることで、考え、生活のリズムが出来る。脳のスピードは確かに落ちますが、直観力や洞察力といった知恵の力はまだ高まっていきます。ぜひ、目標を持つことで、脳を使い、生活にリズムを刻んでください。第4の秘訣は、好きなことに取り組むこと。そして、自分らしく生きることです。自分らしいということは自分ではわかりません。他人が存在することで自分らしさは生まれる。好きなことに無心に取り組んでその人から湧き出るものが出たとき、他人はその人を魅力的な存在として認知します」
第5から7の秘訣としては「脳のトレーニングを行う」「年金以外の収入を得る」「他人の役に立つことをする」という3つが挙げられるという。
「明確な目標を持つ、好きなことに取り組むという意味では、スポーツなどの趣味に没頭することはとてもいいことだと思います。年をとると、醜くなるというのは間違いです。身体は衰えても、知的には成長できます。エイジング(加齢)を恐れず、より賢く生きること。自分の未来は自分でつくることができるのです」
今までになく元気な新しいシニアたち。彼らの新しい趣味はどんどん増えていくことだろう。そして、自分らしい新しい生き方を見つけ、加齢を恐れない、賢く知的な社会が到来することが望まれる。実際、そのスタートは切られているようだ。

山神ボクシングジム

http://www.geocities.jp/yamagami_bg/

ミッドサマー

http://www.midsummer.jp/

遠野ダンススタジオ

http://tohno-dancestudio.com/

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2014.12.15 UP