焼き大根

vol.

トップシェフのヘルシーレシピ

焼き大根

1人分 190kcal 食塩相当量 2.0g

家庭でもできるプロの味
ロンドンの日本料理人に教わる特別篇

旬野菜のおいしさを引き出した
シンプルながら奥深い、日本の味

 イギリス各地方の生産者の元を訪れ食材の研究をしたり、魚の活締めの仕方をレクチャーしたりしながら、本物の、そして時代に合った懐石料理をお出しすべく日々奮闘していますが、そんな中でふと、古の日本料理に想いをめぐらすことがあります。ここでご紹介する料理は、私が京都で最初に修業をした「吉兆」の創始者・湯木貞一氏が、ある寺を訪ねた際に供され、その味わいに感服したという「吉兆」に長く伝わるひと皿です。
 禅宗の僧侶が冬の終わり、雪をかぶり、甘みを充分に含んだ大根を大切なお客様のおもてなしのため、限られた材料の中から作り出したというそれは、「おいしい野菜は、そのままの味を引き出すことが最大の調理法である」ということを再認識させてくれます。
 この料理の最大のポイントは、旬の大根の滋味を存分に味わうため、大根はなるべく厚めに切って、あえてほんの少し中心に芯が残るくらいに焼いていくこと。今回は深い器に合わせ、かなり分厚く切り、40分くらいかけてじっくり焼いていますが、ご家庭なら、もう少し薄く(2cm程度)切り、時間を短く焼いてもおいしく仕上がるでしょう。
 まずは、フライパンに油をひき、千切りにした昆布をじっくり弱火で炒め、昆布の旨味を油に移していきます。昆布は焦げると苦みが出てしまいますので、注意が必要です。香ばしい香りが出てきたら、油から引き上げてください。

ここで出来た「昆布油」で、大根に火を入れていきます。熱が伝わった大根からは、旬の野菜だけが持つおいしいエキスが染み出してきます。糖度の高い甘みのエキスと昆布の油とでできたソースを全体にかけながら焼いていきましょう。火を入れていくうちに、そのソースが大根に戻り、香り高い大根に変身していきます。
 味付けは、酒とみりんと醤油でシンプルに。旨味たっぷりのソースと調味料がなじんだたれを大根にまとわせ、少し焦げ目がつくまで焼いていきます。目指すのは、西洋料理で言うところの「キャラメリゼ」のような状態です。
 大根だけでも充分おいしい料理ですが、昆布油で炒めた付け合わせを添えると、味わいも増し、彩りにもなるでしょう。材料は、手近にあるきのこ類や野菜、何でも大丈夫です。少々手間ですが、それぞれの野菜の食感が残るよう、素材ごと別々に炒めてから、大根と一緒に盛りつけてください。油に旨味を抽出させた昆布も、よくお菓子の“あられ”に入っているカリカリの昆布のようにおいしいものなので、付け合わせに使います。
 下茹でなどの処理もしない、とてもシンプルな料理だからこそ、素材のもつ「えぐ味」さえも旨味に代え、滋味深い料理として仕立てていく……。そんな、古の日本料理が持つ奥深い魅力が垣間見えるひと品。大根本来の味が活きるふくよかで、温かい心地になる、伝統の和食ならではの味わいに、是非挑戦してみてください。

材料(2人前)

大根

300g

昆布

20cmx10cm

舞茸

30g

しめじ

30g

椎茸

1個

ジロール茸
(なめ茸で代用可)

30g

松茸

小ぶりのもの2個

海老芋

2個

大根の葉

適量
※きのこ、野菜は、身近に手に入る、あるいは手元にある野菜ならなんでも

サラダ油

大さじ1.5

1g

※酒

大さじ2

みりん

大さじ1

濃口醤油

大さじ1

七味唐辛子

適量
  1. 昆布を湿らせ(水につけると味が流出するので布巾で湿らせる)、切りやすい硬さになってから千切りにする。

  2. フライパンにサラダ油と昆布を入れ、弱火にかける。昆布の周囲から小さな泡が出る状態を維持し約10分、昆布がカリカリになり、充分に旨味が油に移った「昆布油」の状態になったら、昆布を引き上げる。

    火が入りすぎると苦みが出るため、香りが立って来たら火を止め、昆布を引き上げる。

  3. フライパンに(2)の昆布油の半量と大根を入れ、下味の塩をふる。弱火で、串が通るぐらいまで(柔らかくなりすぎない程度に。中心に少し芯が残っているくらいがベスト)両面を焼く。

  4. 大根に火が通ったらAの調味料を合わせて入れ、強火で煮詰め、表面がカリッとするまで焼く。

    大根の表面をキャラメリゼするようなイメージで。

  5. 付け合わせの野菜は、(2)の昆布油の残りを使い、それぞれ別に、食感が残る程度に焼いていく。

    きのこや根野菜は比較的しっかりと火を入れ、青野菜は油通しをする程度に。

  6. 大根に(4)で煮詰めたたれをかけ、(5)の野菜、(2)の昆布を盛りつけ、最後に七味唐辛子をふりかける。

今回のレシピを、醤油やみりんのたれをつかわず、塩味だけで仕上げれば、より素材の味が際立つ、また違った味わいが楽しめるでしょう。アレンジで、お好みによって、鶏肉や海老のそぼろなどを、あんかけにしてかけてもおいしく仕上がります。メイン素材も、大根に限らず、春ならタケノコ、秋なら茄子を使っても大変おいしい一品になります。タケノコも茄子も甘みのある野菜ですし、同じように野菜から出てきたエキスがとてもいいソースになるからです。

石井義典 YOSHINORI ISHII

1971年生まれ、千葉県出身。「京都吉兆」嵐山本店で研鑽を積み、副料理長に就任。1999年、ジュネーブの国連大使公邸料理長として渡欧、2002年からは同大使に随行し、ニューヨークへ渡る。一時帰国後、2006年再渡米、ニューヨーク「MORIMOTO」 に勤務。"Rising chef award" などの賞を受賞。2010年より、ロンドン「UMU」 の総料理長として招聘され、現在に至る。ロンドン屈指の懐石料理店として評価を高め、2015年、 ミシュラン2つ星を獲得。

UMU

住│
14-16 Bruton Place, Mayfair London W1J 6LX
電│
+44 (0)20 7499 8881
営│
月曜~金曜12:00~14:30LO/月曜~土曜18:00~23:00LO
休│
日曜・祝日
席│
54席

カード│使用可

毎月2回更新

2015.11.9 UP 次回は11月24日更新予定です。

  • ピン