e健骨トレーニング

骨の健康を考えよう

 「骨を丈夫にしよう」と言われるのは子どもだけ、ではありません。
大人になっても、骨を鍛え続けることが大切です。残念ながら、骨は加齢によって衰えてしまうのです。

 ここでは、骨の老化を抑えるトレーニング方法をご紹介します。
毎日続けられるように、色々なメニューを用意しました。骨を健康にする運動法。名付けて「e健骨トレーニング」です。

 いつまでも丈夫な骨と身体を保ち、健やかな生活を送る。
大人になっても、子どものように元気でいたい。そんな気持ちを忘れたくないものです。

中京大学スポーツ科学部・大学院体育学研究科教授/医学博士 湯浅景元

骨は20〜30代をすぎると衰えはじめます。

 骨の中でカルシウムなどのミネラル分が減ると、骨の密度が落ちます。つまり骨がスカスカになって弱くなります。骨の密度がもっとも濃い、いわば骨が一番強い時期は、20〜30代の頃です。骨が弱り始めるのは女性では40代。男性では60代と言われています。さらに女性では50代、男性では70代に入ると、急激に骨は弱くなっていきます。

 骨は弱くなると変形しやすくなり、それが原因で姿勢が悪くなったり転びやすくなってしまいます。転倒が怖いのは、骨折に結びついてしまうから。体重60kgの人が転倒すると、その6倍の360kg近い重さが骨にかかることもあるのです。

骨折・転倒が「寝たきり」の
原因になることも

 年を重ねてからの骨折は、治療やリハビリで努力しても、もとの元気な身体に戻るまでに長い時間がかかります。骨折後の経過によっては「寝たきり」の原因となることも少なくありません。国民生活基礎調査の「要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合」によれば、「骨折・転倒」は大きな原因の1つにあげられているほどです。

介護が必要となった原因の構成割合(平成25年)
介護要因の11.8%は骨折・転倒によるものである

脳血管疾患
(脳卒中)
18.5%

認知症
15.8%

高齢による衰弱
13.4%

骨折・転倒
11.8%

関節疾患
10.9%

心疾患
(心臓病)
4.5%

その他
22.5%

不明・不詳
2.6%

厚生労働省 平成25年国民生活基礎調査の概況より作図

骨を強くするトレーニング

 骨は、絶えず「骨(こつ)形成」と「骨(こつ)吸収」により古い骨を新しい骨に変えています。

 「骨形成」とは、文字どおり、骨が作られること。運動という刺激が加わると、骨の細胞同士をつなぐ細い管のなかの組織液が動き、骨細胞が反応して、この「骨形成」が促され、骨が太くなります。運動に加えて、日光を浴びる、ビタミンDを摂取する、適度な睡眠をとることも「骨形成」に大切なことです。

 骨吸収と骨形成のバランスがくずれ、骨吸収が骨形成を上回ると骨密度が下がってしまいます。極端な例では、寝たきりのままでいると、健康な人でも3週間で骨密度が15%も下がってしまうという報告もあります。骨に衝撃が加わったり間接に刺激が与えられることで、骨形成が促され、骨は丈夫になります。

運動不足と「骨吸収」の関係についての研究

 無重力状態の宇宙船の中で長く過ごすと、宇宙飛行士も筋肉や骨が衰え、地球に戻った時、歩けなくなったりします。1970年代以降、NASAをはじめ各国の研究機関で、運動不足と「骨吸収」の関係についての研究がおこなわれました。今では、運動不足が「骨吸収」に影響することがわかっています。

 たとえば、ロシアでは1年間「寝たきり」だった人は、立ち上がることができず、しばらくの間、車いすでの生活になってしまったという研究が報告されました。日本でも、無重力状態を再現し、健康状態の低下を確認する実験がおこなわれました。

 「骨吸収」を防ぐための研究もなされました。3週間寝たきりの場合、休んだ日数の3倍の期間、運動を継続すれば、身体はもとに戻るというデータが存在します。そこで現在の医療現場では、ギブスを完全に固定せず、早めにリハビリを開始するなどの対応がとられてます。

 運動、栄養、睡眠、日光浴などで、「骨吸収」と「骨形成」のバランスを保ち、丈夫な骨を作りましょう。

骨を強くする運動

3種の「転倒」予防トレーニング

 時には体重の6倍もの負荷がかかる転倒。骨の健康のためには、転倒に負けない丈夫な骨づくりはもちろん、そもそも簡単には転ばない身体づくりが大切です。そのために必要なのは、筋力・体幹力・柔軟性。この3つの視点からトレーニングをご紹介します。

まず「筋トレ」とも呼ばれる「レジスタンストレーニング」。太もも・膝まわりといった下半身の筋肉、腹筋・背筋などに負荷をかけて強化することが大切です。

次に「ストレッチ」。全身・背中・股関節・膝・足関節などの筋肉や関節をしっかり伸ばして、柔軟性を高めましょう。

そして「体幹トレーニング」。頭・首・胴体などの総称が「体幹」です。体幹が安定すれば姿勢もよくなり、ちょっとのことではブレない身体になります。

転倒を防止する運動

運動レベル別のトレーニング

 ここまで、骨の健康の大切さとそのための運動法をご紹介してきました。さっそくトレーニングに取り組まれている方もいらっしゃるかもしれませんが、なかには「自分にはどんなメニューがあっているのかわからない」「運動をはじめたばかりで体力に不安がある」という方もいらっしゃると思います。

 ここでは、それぞれの体力に応じて、今までご紹介したトレーニングメニューを整理しています。まずは、自分の運動レベルをチェックしてください。初級・中級・上級と分かれていますので、自分の運動レベルにあったメニューを選択してください。慣れてきたら、一つ上のレベルにトライしてみるのもいいでしょう。

皆さんの骨が丈夫になり、元気な気持ちを持ち続けられることを心から願っています。

  あなたのレベルをチェック
それぞれの体力、筋力に合わせたメニューで展開するために、
運動レベルをチェックしましょう。
骨を強くする運動
運動による骨への過重により、骨を強化しましょう。
骨に衝撃力が加わったり関節に刺激が与えられることで、
「骨形成」が促され、骨は丈夫になります。
転倒を防止する運動
レジスタンストレーニング(筋トレ)、体幹トレーニングで、
筋力と体幹をきたえましょう。ストレッチをおこなって
柔軟性も高めれば、バランス力もアップします。

湯浅景元(ゆあさかげもと)

愛知県名古屋市出身。中京大学体育学部卒、東京教育大学大学院修了、東京医科大学で博士(医学)を取得。中京大学スポーツ科学部・大学院体育学研究科教授、医学博士。専門は、コーチング論、スポーツ科学入門、スポーツ環境論、スポーツ選手の身体運動力学、解剖学、生理学。浅田真央や室伏広治など、日本を代表するスポーツ選手を指導してきた。講演やテレビ出演も多く、スポーツへの「科学」の取り入れ方、生きる力をつけるための運動法などに関する健康啓発活動にも貢献。著書に、『意外と知らない体脂肪の真実』(廣済堂出版)、『ひざ・腰・肩が楽になる 一生健康 7秒体操』(角川SSコミュニケーションズ)、『老いない体をつくる』(平凡社)ほか多数。

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